○ACT3“真・家畜人ヤプー・リリスの帝国編”第32話・第33話○
確か記憶では、そのはずだった。何だか記憶が、ぷっつりと途切れている。
ここは、シリウス星系第4惑星“アベルデーン”。
そしてここは、その中でも“ポーリーン侯爵”の住まう、広大なる邸宅敷地内……。
その邸宅の敷地内の丘陵地帯の一つに。現在“クララ伯爵”の住まうべく、客用の邸宅がしつらえられてあった。
現在のクララは、ポーリーン侯爵の客として扱われていた。
“ウイリアム・コトウィック”。現在。ウイリアムは、過去の名“ウイリアム・ドレイパア”を改め。“コトウィック家”の家名を名乗っている。
ようするに、“ウイリアム伯爵夫人”の誕生である。
つまり、ウイリアムは、愛でたくも。到頭、見事なる“ヒノマル・フラッゲ(初夜糖果・主人の婚姻を祝うヤプーのおやつ)”を“500個”ばかり作り。無事。クララへの“婿入り”を果たしたのであった……。
リンは面白くなかった……。
否。自分がクララと結婚が出来ないので、面白くなかったのでわない。
現在の自分が、クララとウイリアムが共に眠る新婚ダブルベッドの側に、ちょこんと置かれる。“プライベート・ドウォーフ(侏儒型専用肉便器)”にされてしまった自分が面白くなかったのだ。
現在の彼の身体は。横幅、背幅と筋肉の付き具合は変わらず、身長のみ元来の半分。舌の長さは元来の2倍。
舌先には、ぽつぽつざらざらとした、巨大化した味蕾が形成されている。
それに、それに何か、上顎がえぐられているみたいで、すーすーする。どうやら口が大きく上顎の頬辺りまで、切り裂かれているみたいだ……。
呼吸は不思議な事に、背中で感じる。呼吸器の気道が背中に移動させられたのだ。何か。鼻の奥に異物感がある……。
たぶん。彼の広い鼻腔の空洞内に、“温風ドライヤー”が埋め込んであるのだ。
リンは強かに思った。
『僕は何という、えげつない身体にされてしまったものだろう……。
しゃべりたくてもしゃべれない……。多分、舌が長過ぎるせいだ……。前歯も無い……。』
リンは再び思った。
『僕がこの格好になって、クララの身体を支えつつ。クララのし尿を呑み込むのだ。暖か〜いクララのお尻が嬉しい……。そして僕は、クララのなした後の、お尻を嘗めるのだ。
クララは僕の“ワキモカ(ヤプー語で、ただ独りの愛する人との意味)”なのだ!!』
間もなくリンは、心の中で。つい、ヤプーダムの“賛美歌(ヒム)”を唱えてしまった。
『今日よりは、かえりみなくて、大君の。しこのみたいと、いでたつ我は……。』
すべてのセッチンヤプー(肉便器)は。主人の“し尿を頂くとき”には、このような詩を詩ってしまうようである……。つい、嬉しくなると“ヒム”を詩ってしまうのだ。
こんなことを自然に行ってしまうリンは、いつしか“一端”のセッチンに、成りきってしまっていたのであった。
しかし、リンはまた、続けてこうも思った。
『あ”〜。僕やだ!!“ダブルベッドの”の脇に置かれているという事は。“夫婦兼用”なのだー!!!! 僕。“ウイリアム”のし尿は、食べたくないー!!!!』
贅沢な事を言う“セッチン”もいたものてある……。
主人を自分から選んでしまうリンは、“贅沢思考”のセッチンであった。
しばらくしてからリンは、ベッドの横からちょこちょこと、部屋の中央に、独り歩き出て行った。
すると、部屋の隅に固いクセの毛のヤプーが、2匹座り込んで、懸命に靴を磨いている所を見た。
こという彼らは“靴置きヤプー”である。彼の頭の毛は、正に固く逆立ち、靴置きの使用に成っている。裸の身体に金の首輪。痩せてはいるが、筋肉質。
かれらは現在、主人達の外出中に、懸命に靴を磨いている様子だった。一足はクララ用。一足はウイリアム用である。
ちなみに、靴墨は奴隷の精液。ワックスはヤプーのなみだ(泪)。靴そのものは、ヤプーの皮膚をなめして作った革で出来ている。
言葉少ない、靴置きヤプーは、リンのセッチンを一眼見ると。にんまりと微笑み。
また真剣なる眼差しに帰ると、靴を磨き出している。
リンが隣の部屋へ行くと。テーブル回りに、読心家具である“肉椅子”が、5台いた。
“ツピツーン(痰壷ヤプー)”も一匹いた。ツピツーンは、まるでジャコペッティの銅像のように凄く痩せていて、絨毯の上にしゃがんで、口を開け、顔面を上に上げている。
リンは思った。
『痰壷よ。今は主人は留守中だぞよ。勤務時間外は、少し休んだらいいのに……。』
リンは。肉椅子を見ていて、主人の留守中ので、『一度座ってみたい。』と思ったが。
尻がまた痛くなるのではないか? と思い直して、そこで我慢した。
スピツーンのいる部屋の隣は、広いサンルームだった。
もうすぐ、秋の終わりに差し掛かる“アベルデーン”の暖かな昼下がりの日の光が、サンルームの中に差し込んでいる。
リンは嬉しくなった。
『おお!! 気持ちいい!! まるで“春の日”の暖かい日の光のようだ!!!!』
リンは。太陽光線にあたるべく、サンルームの日だまりに歩き寄ると、その場に座り込んだ。それこそは、セッチンの“日向ぼっこ“である。“便器の虫干し“である……。
見れば、“日向ぼっこ”を楽しむ“ヤプーは、リンだけではない。
窓の側には、もう一匹のセッチン“スタンダード・セッチン(標準型肉便器)”も、立っていた。
よく見ると、その彼(スタンダード・セッチン)は、ヘッドホンを付けて、“超小型・携帯ラジオカセット”を、首からヒモで下げている。
『あいつ。……何を聞いているのだろう?!』
黄色の地肌に、全身緑の唐草模様の入れ墨を入れられた、まるで“ET”のような姿をした彼は、リンの存在にもまるで気つかず、時折腰をねじるようにして踊っていた。
“パラパラ”である……。
ヤプー属の事であるから“盆踊り”や、もしれぬ……。
セッチンは。足下まである長く細い、は虫類のような、あどけない可愛い“お手て”を、時折、柔らかくしなやかに、曲げながら踊っている。結構、踊りは堂に入っている。
リンは。この場にして初めて“オフ時”の、セッチンの姿を見たのであった。
サンルームの隣の部屋は。広いジャグジー(大きな風呂)であった。
“古代ローマ人”の生活ぶりを愛でる。“イース”の人たちもそうである。“巨大な風呂”は、きっと“大好き”に違いない。
ジャグジーの側には、いろんなお酒が並んだ、カウンターがあって。またも、太陽光線がいっぱい入る、大きな窓が取り付けてあった。
そして、窓際には木製のびーち・チェアー風の長椅子が置かれていた。
リンは、つい嬉しくなって、その上に座り込んだ。
しかし、横にはなりにくい……。
胴体が、まん丸になっているからだ……。
鼻の穴が背中に付いているのも不便だ。
がっかりしてリンは、立ち上がると、今度はジャグジーの水面むをまんじりと見つめた。
すると今度は“バスタブ・ミーズ(浴槽倭人・主人の身体を洗う小人のヤプー)”達が、40匹ばかり楽しそうに泳いでいる。
リンは、ふと思った。 『ヤプーの“オフ時”というのは、結構、楽しいのだ。ことにここは“貴族の邸宅内”だ。ここのヤプー達は“主人達”の生活に乗じてむ、特に“恵まれた”者達なのだろう。』
しばらくすると。“七福神達(オルゴール倭人)”が歩いてやって来た。彼らはウイリアムがクララに、出会った当初に贈った品物であり。いわゆる、部屋のムードを盛り上げるために、万能の音楽を主人に聞かせることを業としている、倭人ヤプー達である。
リンは思った。
『クララ達のベッドルームのテーブルの上から、こいつらは、どうやってここまで歩いて来たのだろう……? 彼等は飛べるのであろうか?』
答えは簡単である。彼等は“天人”であるのだから、元々空は飛べるものなのである。
それも彼等は“ψ(サイ・エスパー)”能力者達である。自力の“念力”で飛ぶ。
七福神のリーダー。弁財天が間もなくして皆に言った。
「“倭人ヤプー”と言えど、“生き物”なのだから。たまには“健康”のためには運動も必要よ!!!! いつものように宝船の中にばかり、座っていたのでは、身体が“なまる”わ!!! 何か、音楽でも一曲いきまひょか!?」
爺の福禄寿が言った。
「カラオケやでー。“ラジオ”でやっているあれ、“孫”いこ、孫!!!!」
リンは思った。
『“倭人”て、ラジオ聞けるんかいな……。そういったら、さっきの“セッチン”ラジカセを、聞いていたな……。僕もクララに頼んで、ラジカセ貰おうかな……。』
リンはふと、窓の外を覗いてみた。
遠くの方で、ポーリーンの異父兄弟の妹、ドリスが。コルモラン(巨大な家畜人馬)の首の付け根に鞍を乗せて座り込み、いつものヤプーの革製の靴を着込み、鞭をふるいながら駆け回っている。
しばらくすると“ネアンデルタール・ハウント”のペロが、邸宅の外からガラス越しに。リンの側に酔って来て、その前に犬のようなスタイルで座り込んだ。
舌を延ばし、はうはうと息を切らす、ペロ。
リン「ペロはおとなしいなあ……。“ペロ”が“ニューマ”だったら、僕は今頃。こんな風な身体には、なっていなかっただろあになああ〜。」
福禄寿のカラオケが一曲終わると、弁財天が言った。
「今夜は、ウイリアム男神が、“影間(肛門を差し出す、女役の男)”になる日です。今日は、どのような音楽を奏でたらよろしいでしょうかな?! 皆さん。」
オルゴール倭人の七福神達である。彼等は音楽に関しては“通”である。
特に、彼等の音楽に対しての好みはうるさかった。
突然、大黒天が手を挙げて言った。
「ストラビンスキーの“禿げ山の一夜”やで!!!! クララ女神。真剣になりよるで!!!!」
続けて、恵比寿天も言った。
「親父ーっ(恵比寿天は大黒天の息子である。)“はげいち”やったら、ベートーベンの“運命”の方が。もっと迫力あるで!!!!」
弁財天が水を差した。
「“運命”は、えぐすぎます。いえいえ“クララ女神”。だけではなく、“ウイリアム男神”の事も考えて挙げなければ……。」
オルゴール倭人達の、その話の内容の一部始終を、端から聞いていた。“プライベート・ドウォーフ”のリンは。ほくそ笑みながら喜んだ。
『ウイリアムが“影間”になる……うふうふうふ♪』と。 2009'7'29'
原文・2001年。
2009年7月 アップロード。
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☆ACT3“真・家畜人ヤプー・リリスの帝国編”第32話・第33話☆
☆第32話☆Το κατα ΡΙΝ Ευαγγελιον.β´
(ト カタ エウアンゲリオン デュオ・鱗一郎の福音書)☆
☆第33話☆ΣΑΒΒΑΤΑΝ(サバトン 休日)☆
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