○ACT3“真・家畜人ヤプー・リリスの帝国編”第32話・第33話○


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ACT3・5
第32話★Το κατα ΡΙΝ Ευαγγελιον.β´
(ト カタ エウアンゲリオン デュオ・鱗一郎の福音書)★
第33話★ΣΑΒΒΑΤΑΝ(サバトン 休日)★





◎“真・家畜人ヤプー・リリスの帝国編”第33話”◎
◎第33話◎ΣΑΒΒΑΤΑΝ(サバトン 休日)◎


西暦3970年。ヤプー歴1748年。9月15日……。



 確か記憶では、そのはずだった。何だか記憶が、ぷっつりと途切れている。

 ここは、シリウス星系第4惑星“アベルデーン”。

 そしてここは、その中でも“ポーリーン侯爵”の住まう、広大なる邸宅敷地内……。

 その邸宅の敷地内の丘陵地帯の一つに。現在“クララ伯爵”の住まうべく、客用の邸宅がしつらえられてあった。

 現在のクララは、ポーリーン侯爵の客として扱われていた。

“ウイリアム・コトウィック”。現在。ウイリアムは、過去の名“ウイリアム・ドレイパア”を改め。“コトウィック家”の家名を名乗っている。

 ようするに、“ウイリアム伯爵夫人”の誕生である。

 つまり、ウイリアムは、愛でたくも。到頭、見事なる“ヒノマル・フラッゲ(初夜糖果・主人の婚姻を祝うヤプーのおやつ)”を“500個”ばかり作り。無事。クララへの“婿入り”を果たしたのであった……。


 リンは面白くなかった……。
 否。自分がクララと結婚が出来ないので、面白くなかったのでわない。

 現在の自分が、クララとウイリアムが共に眠る新婚ダブルベッドの側に、ちょこんと置かれる。“プライベート・ドウォーフ(侏儒型専用肉便器)”にされてしまった自分が面白くなかったのだ。

 現在の彼の身体は。横幅、背幅と筋肉の付き具合は変わらず、身長のみ元来の半分。舌の長さは元来の2倍。

 舌先には、ぽつぽつざらざらとした、巨大化した味蕾が形成されている。

 それに、それに何か、上顎がえぐられているみたいで、すーすーする。どうやら口が大きく上顎の頬辺りまで、切り裂かれているみたいだ……。
 呼吸は不思議な事に、背中で感じる。呼吸器の気道が背中に移動させられたのだ。何か。鼻の奥に異物感がある……。

 たぶん。彼の広い鼻腔の空洞内に、“温風ドライヤー”が埋め込んであるのだ。


 リンは強かに思った。
『僕は何という、えげつない身体にされてしまったものだろう……。
 しゃべりたくてもしゃべれない……。多分、舌が長過ぎるせいだ……。前歯も無い……。』

 リンは再び思った。
『僕がこの格好になって、クララの身体を支えつつ。クララのし尿を呑み込むのだ。暖か〜いクララのお尻が嬉しい……。そして僕は、クララのなした後の、お尻を嘗めるのだ。

 クララは僕の“ワキモカ(ヤプー語で、ただ独りの愛する人との意味)”なのだ!!』

 間もなくリンは、心の中で。つい、ヤプーダムの“賛美歌(ヒム)”を唱えてしまった。
『今日よりは、かえりみなくて、大君の。しこのみたいと、いでたつ我は……。』

 すべてのセッチンヤプー(肉便器)は。主人の“し尿を頂くとき”には、このような詩を詩ってしまうようである……。つい、嬉しくなると“ヒム”を詩ってしまうのだ。

 こんなことを自然に行ってしまうリンは、いつしか“一端”のセッチンに、成りきってしまっていたのであった。

 しかし、リンはまた、続けてこうも思った。
『あ”〜。僕やだ!!“ダブルベッドの”の脇に置かれているという事は。“夫婦兼用”なのだー!!!! 僕。“ウイリアム”のし尿は、食べたくないー!!!!』

 贅沢な事を言う“セッチン”もいたものてある……。

 主人を自分から選んでしまうリンは、“贅沢思考”のセッチンであった。



 しばらくしてからリンは、ベッドの横からちょこちょこと、部屋の中央に、独り歩き出て行った。

 すると、部屋の隅に固いクセの毛のヤプーが、2匹座り込んで、懸命に靴を磨いている所を見た。

 こという彼らは“靴置きヤプー”である。彼の頭の毛は、正に固く逆立ち、靴置きの使用に成っている。裸の身体に金の首輪。痩せてはいるが、筋肉質。

 かれらは現在、主人達の外出中に、懸命に靴を磨いている様子だった。一足はクララ用。一足はウイリアム用である。

 ちなみに、靴墨は奴隷の精液。ワックスはヤプーのなみだ(泪)。靴そのものは、ヤプーの皮膚をなめして作った革で出来ている。




 言葉少ない、靴置きヤプーは、リンのセッチンを一眼見ると。にんまりと微笑み。
 また真剣なる眼差しに帰ると、靴を磨き出している。





 リンが隣の部屋へ行くと。テーブル回りに、読心家具である“肉椅子”が、5台いた。

“ツピツーン(痰壷ヤプー)”も一匹いた。ツピツーンは、まるでジャコペッティの銅像のように凄く痩せていて、絨毯の上にしゃがんで、口を開け、顔面を上に上げている。


 リンは思った。
『痰壷よ。今は主人は留守中だぞよ。勤務時間外は、少し休んだらいいのに……。』

 リンは。肉椅子を見ていて、主人の留守中ので、『一度座ってみたい。』と思ったが。
 尻がまた痛くなるのではないか? と思い直して、そこで我慢した。

 スピツーンのいる部屋の隣は、広いサンルームだった。

 もうすぐ、秋の終わりに差し掛かる“アベルデーン”の暖かな昼下がりの日の光が、サンルームの中に差し込んでいる。

 リンは嬉しくなった。
『おお!! 気持ちいい!! まるで“春の日”の暖かい日の光のようだ!!!!』




 リンは。太陽光線にあたるべく、サンルームの日だまりに歩き寄ると、その場に座り込んだ。それこそは、セッチンの“日向ぼっこ“である。“便器の虫干し“である……。


 見れば、“日向ぼっこ”を楽しむ“ヤプーは、リンだけではない。

 窓の側には、もう一匹のセッチン“スタンダード・セッチン(標準型肉便器)”も、立っていた。


 よく見ると、その彼(スタンダード・セッチン)は、ヘッドホンを付けて、“超小型・携帯ラジオカセット”を、首からヒモで下げている。

『あいつ。……何を聞いているのだろう?!』
黄色の地肌に、全身緑の唐草模様の入れ墨を入れられた、まるで“ET”のような姿をした彼は、リンの存在にもまるで気つかず、時折腰をねじるようにして踊っていた。

“パラパラ”である……。
 ヤプー属の事であるから“盆踊り”や、もしれぬ……。

 セッチンは。足下まである長く細い、は虫類のような、あどけない可愛い“お手て”を、時折、柔らかくしなやかに、曲げながら踊っている。結構、踊りは堂に入っている。

 リンは。この場にして初めて“オフ時”の、セッチンの姿を見たのであった。



 サンルームの隣の部屋は。広いジャグジー(大きな風呂)であった。
“古代ローマ人”の生活ぶりを愛でる。“イース”の人たちもそうである。“巨大な風呂”は、きっと“大好き”に違いない。

 ジャグジーの側には、いろんなお酒が並んだ、カウンターがあって。またも、太陽光線がいっぱい入る、大きな窓が取り付けてあった。



 そして、窓際には木製のびーち・チェアー風の長椅子が置かれていた。

 リンは、つい嬉しくなって、その上に座り込んだ。
 しかし、横にはなりにくい……。

 胴体が、まん丸になっているからだ……。
 鼻の穴が背中に付いているのも不便だ。

 がっかりしてリンは、立ち上がると、今度はジャグジーの水面むをまんじりと見つめた。






 すると今度は“バスタブ・ミーズ(浴槽倭人・主人の身体を洗う小人のヤプー)”達が、40匹ばかり楽しそうに泳いでいる。

 リンは、ふと思った。 『ヤプーの“オフ時”というのは、結構、楽しいのだ。ことにここは“貴族の邸宅内”だ。ここのヤプー達は“主人達”の生活に乗じてむ、特に“恵まれた”者達なのだろう。』


 しばらくすると。“七福神達(オルゴール倭人)”が歩いてやって来た。彼らはウイリアムがクララに、出会った当初に贈った品物であり。いわゆる、部屋のムードを盛り上げるために、万能の音楽を主人に聞かせることを業としている、倭人ヤプー達である。


 リンは思った。
『クララ達のベッドルームのテーブルの上から、こいつらは、どうやってここまで歩いて来たのだろう……? 彼等は飛べるのであろうか?』

 答えは簡単である。彼等は“天人”であるのだから、元々空は飛べるものなのである。

 それも彼等は“ψ(サイ・エスパー)”能力者達である。自力の“念力”で飛ぶ。


 七福神のリーダー。弁財天が間もなくして皆に言った。
「“倭人ヤプー”と言えど、“生き物”なのだから。たまには“健康”のためには運動も必要よ!!!! いつものように宝船の中にばかり、座っていたのでは、身体が“なまる”わ!!! 何か、音楽でも一曲いきまひょか!?」

 爺の福禄寿が言った。
「カラオケやでー。“ラジオ”でやっているあれ、“孫”いこ、孫!!!!」

 リンは思った。
『“倭人”て、ラジオ聞けるんかいな……。そういったら、さっきの“セッチン”ラジカセを、聞いていたな……。僕もクララに頼んで、ラジカセ貰おうかな……。』


 リンはふと、窓の外を覗いてみた。

 遠くの方で、ポーリーンの異父兄弟の妹、ドリスが。コルモラン(巨大な家畜人馬)の首の付け根に鞍を乗せて座り込み、いつものヤプーの革製の靴を着込み、鞭をふるいながら駆け回っている。


 しばらくすると“ネアンデルタール・ハウント”のペロが、邸宅の外からガラス越しに。リンの側に酔って来て、その前に犬のようなスタイルで座り込んだ。

 舌を延ばし、はうはうと息を切らす、ペロ。





リン「ペロはおとなしいなあ……。“ペロ”が“ニューマ”だったら、僕は今頃。こんな風な身体には、なっていなかっただろあになああ〜。」

 福禄寿のカラオケが一曲終わると、弁財天が言った。
「今夜は、ウイリアム男神が、“影間(肛門を差し出す、女役の男)”になる日です。今日は、どのような音楽を奏でたらよろしいでしょうかな?! 皆さん。」

 オルゴール倭人の七福神達である。彼等は音楽に関しては“通”である。

 特に、彼等の音楽に対しての好みはうるさかった。

 突然、大黒天が手を挙げて言った。
「ストラビンスキーの“禿げ山の一夜”やで!!!! クララ女神。真剣になりよるで!!!!」

 続けて、恵比寿天も言った。
「親父ーっ(恵比寿天は大黒天の息子である。)“はげいち”やったら、ベートーベンの“運命”の方が。もっと迫力あるで!!!!」



 弁財天が水を差した。
「“運命”は、えぐすぎます。いえいえ“クララ女神”。だけではなく、“ウイリアム男神”の事も考えて挙げなければ……。」


 オルゴール倭人達の、その話の内容の一部始終を、端から聞いていた。“プライベート・ドウォーフ”のリンは。ほくそ笑みながら喜んだ。
『ウイリアムが“影間”になる……うふうふうふ♪』と。 2009'7'29'

原文・2001年。
2009年7月 アップロード。






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