○ACT3_14“真・家畜人ヤプー・リリスの帝国編”○


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ACT3・14
●第45話●ΓΕΝΝΙΕΜΑΙ(御子出生)●
●第46話●ΨΑΛΜΟΙ ε´(プサルモイ ペンテ・詩編5)●
●第47話●ΚΟΜΜΑ(神々の宴)●







◎ACT3“真・家畜人ヤプー・リリスの帝国編”第46話・第47話◎
◎第46話◎ΨΑΛΜΟΙ ε´(プサルモイ ペンテ・詩編5)◎


「♪乗馬靴履いてた女の子……。
 未来人に連れられて、行っちゃった……♪」

「♪昔々のリニチロが、助けた未来艇に乗せられて……。
 水晶宮へ来てみれば、絵にもかけない美しさ……♪」

「♪ポーリーンがね。時空でちょくちょく隠し事……。
 どんなに上手に隠しても、いずれはしっかりばれてるよ。
 だんだん誰〜れが、“フー(侏儒の密告者)”でしょう??!」

《“ヤプー国”の童謡変え歌。》





◎第47話◎ΓΕΝΝΙΕΜΑΙ(神々の宴)◎


 西暦3970年。ヤプー暦1748年。8月15日……。






 片道切符……。それももう決して産まれ故郷に帰る事の無い、1組の若い“カップル”が、ここにもいた。“リン”と“クララ”……。彼らは20世紀の地球の“M24世界”から、未来世界“M22世界”へとやって来た、全くの“異邦人”たちである。

 2人の関係は、“家畜人”と“ロード(現神人)”……。
 そのあるべく運命の差は、恐ろしく開いていた。しかし“リン”も“クララ”も同じくして、この“地球上”で育ち育まれた、“生命体”同士に違いなかった。

 クララは、リンを支配するべく“猿人・ネアンデルタール族”の“子孫”と思い込んでいる。
 リン自身も、自分の身の立場を、その通りだと信じ込んでいる。


「“ヤプー族”は。“ホモ・サピエンス”ではない!!!! ただの“猿”……!!!!」

 その意識は。自らを“ロード”あるいわ唯一の“人類”と、過剰なまでに名乗らせる“イース人類たち”を造り上げ。かくも、“ヤプー族たち”を“残忍”なまでに扱わせる。

“ヤプー族”は“猿人”であるので。家具にも、薬にも、玩具にも成りうる。そして、食品としてまでも……。
 その存在は、従順なる“家畜”や“ペット”と同等である。

 イース帝国が支配する“異星人類たち”にも“特別な例外”は無く。“半人類”と呼び。
 また“プラスミド”の一つのあり方によっては、“奴隷”にも“家畜”にも使い分けられている。

 知性はあるが、それだけでは“人類”たる“者”を名乗る“権利”は無いのである……。

 人類と猿人との間に存在する“ミッシング・リング”。ある種。人類の種は、宇宙から飛来して来たのかもしれない……。それは、イース人類の持つ“最終思考”でもあった。

 しかし“ヤプー”の定理は一つ。“人類”に刻似した“猿”なのである……。




 間もなくすると、建物の外では、ぽつぽつと雨が降り出して来た……。

 ここは地球。バルカン半島の離れ、シシリー島の一角。ここでは、ポーリーン侯爵の新邸宅“水晶宮”の“落成パーティー”が始まりつつあった。24組48人の参列者たちが、次々と集まって来る。
 これは、貴族たちばかりの集まりである。




 ローヤプーのリンは、クララに鎖で引かれ、楽しそうに客たちの行列を見守っている。
リン『ハリウッドの入賞式や〜!!!! ぴかぴかの映画俳優の総行列を見ているみたい!!!!』


 確かにここには、醜い者は1人もいない。総て垢抜けした容貌の、白人ばかりである。
 髪の色に黒い者はいない、ヤプーの髪の色と区別をしてだろう。目の色は七色。それは、黒い者もいる。
 男たちのスカートドレス、どこかクリムト風。

 女たちは地味なズボン仕立てのダークスーツにハイヒール、シークレットブーツを派手に着こなしている。

 ざっと見て、対照的に男性陣より女性陣の方が背が高い。つまり、女性の目線の方が、男性より高くないと、ここ“イース”では変なのだ。



 


 入り口には、ヤプーの黒い髪を編み上げた、黒い艶のある絨毯。このヤプーは

 特別に遺伝子操作をして長い髪を持つもので、若い処女の物を使っている。
 花瓶に立てた、真っ赤な巨大輪の生け花の数々。生け花には、根っこがあり、ヤプーの身体を栄養としている。

 歩く“コケシ(人面椅子、奇形ヤプー)”




 会場は立食パーティ風に、巨大なテーブルが3つ。テーブル中央には、それぞれ、こんがり焼けた雌家畜の“食用ヤプー”の頭部が1個づつ、技とらしく飾られている。




 これは、ヤプーの“炙り焼き風・活け造り”である。それに“食用ピグミー”の“串焼き”の数々。それに、ヤプーの背中の肉を薄く切って料理した“すき焼き鍋”。


 中でも最上級とされるのは、女王陛下御用達の“コーン・コピア(豊穣の角)星”で獲れる、“クレアブ(食用畜)”の最上級品ばかりである。……ことにクレアブは、お醤油味が好評である。




“医食同源”と言うか、自らの“健康”のためには、“共食い”が“一番身体に良い”と言う、古代からの“原理”であろう。
 他には、羊や豚、牛の料理もあるが。やはりメインディッシュはヤプーの肉である。

 それに加えて、各宇宙恒星系で採れた、数々の美味珍味。
 野菜サラダ類、フルーツの盛り合わせ、などが、テーブルに、さんぜんわんさと並んでいた。



 食事が始まると、もう間もなく。胃の中を満腹にさせた招待客たちが、食べた物を吐き出し棄てる。目的は、御馳走を少しでもたくさん賞味するためである。

 ここイース帝国ではそれ故に、貴族のパーティでの“食い吐き道楽の習慣がある。
 これは“古代地球のローマ貴族の風習”に習って行うパーティでの習慣であるが、古代ローマでは。この“ゲロ(吐瀉物)”を、パーティ会場の邸宅の回りや、便所、近所の小川や川べりに吐き出したというが。

 現在のイースでは、有り難いことに、ペリカン顔の“ヴォーミトラー(肉反吐盆ヤプー)”というのがいて、ゲロを受け皿の代わりを成して呑み込んでくれる。





 ちなみに。吐き出された、盆の内容物は“宇宙の珍味”の品々であるから、実際高価なものである。見てくれは悪いが“栄養満天、美味”である。
 一端、咀嚼されて胃液とこってり混じり合った物である。
『意識さえしなければ、誰が食べても、胃に“もたれる”事は決してあるまい……。』


 これらの一端“ヴォーミトラー”で呑み込まれたものは。再度そいつから吐き出され、1人づつ吐瀉物がパックされ、吐いた者の名が明記される。
 これらは、イース人たちが普段着る“衣服”と同様。十分食べれるものであるので、あとで“奴隷たち”が、だれそれの吐瀉物かをしっかり認識し、食事の珍味を、主人と共に堪能する事が出来。またも、その後の余り物は“ヤプーたち”の“大御馳走”になる。



 来客の面々が立ち並ぶ。もとい、コケシ(顔面椅子)に座るのも良し。自分が連れて来たペット(家畜人)に座るのも良し。コケシは当然、ヤプーを素材とした独身家具てある。

 彼らは、それぞれにお客様の思考波を読み取り、お客様の後を追いかけ、お尻の下に敷かれる事を労いとする。その格好は寸胴で首が無く円筒形。背は80センチ程度。頭の上に四角い座布団を抱き、頭上に客人のお尻を頂く。

 まお、このコケシは。もともとから独身能力を持つ“ψ(サイ)ヤプー”ではないので、人工的に“薬物の投与”によって“ψヤプー”に仕立てられたものである。
 ちなみに彼らコケシは、薬が切れ、用済みになると急激に“置いさらばえて”働けなくなるので、廃棄処分される。






 パーティの中番の頃……。小さなグループがあっちこっちに出来。各自、顔面椅子に座ったり、立食しながらの会話がはずんでいた頃の事であった。

 そこに“RSF(連邦宇宙軍)”総司令官。金髪の髪に青瞳、長身細身、歳の所30歳。実際年齢440歳。藍色の軍服姿の“卿セオドラ・シャーニンガム伯爵大将”の姿があった。

 彼女は、ポーリーンの兄でセシルの妻。“メアリ・ドレイパア伯爵少将”の直接の上司である。
 その女史。セオドラが、丁度その場に同席していた“地球圏・タイムパトロール総監”の“アンナ・テラス侯爵”に、突然喧嘩を売るように、毒々しくまんじりと言った。

「あんた。貴族のくせに、ちょっとは“恥”を知りなさいよ。貴女が地球で何をしているかと思えば。ヤプー族に“おしも崇拝”をさせているって言うじゃないの。“おまんこ”と“ちんこ”を“ロード(神)”として、ヤプー共に崇拝させていい気になって!!!! おお〜恥ずかしい!!!!」

 アンナはセオドラに言い返した。
「セオドラ殿!!!! おまんこを馬鹿にしたら罰が当たるぞよ!!!! おまんこは女の大切な物。ちんこは男の大切な物じゃ!!!! それが崇拝の対象となるのは当然である!!!!」

セオドラ「貴女は、イースの“3大女神”の1人と讃えられる程の美女で有名だわ!!!! しかしね、ヤプーどもは貴女の美貌を全く知らずに、貴女の“おまんこ”の形のみを美称するのよ。なんて恥ずかしい女!!!! “おしも”だけが“女の象徴”じゃ無いわ!!!!」

 アンナは、恐れ多くも誇り高くも“スコットランド王室”の血を引く大貴族である。“卿・侯爵様”である。しかし……アンナには、1/4ばかり下級貴族(爺がギリシャ系。ちなみにイースでは、ノルマン、ゲルマン、ケルト等の北方系血族が上級貴族となれる傾向にある。)の血が混じっているため、酷く自分を恥じている部分もあった。

 それゆえ、成り上がりの、“イングランド貴族”の“セオドラ伯爵”などについ、からかわれてしまうのであった。



 アンナは“ヤマティコス(日本)”の、“軍神・アマテラス”を演じる程の“高級ロード”である。

 ヤマティコスの“宗教世界”の“ドグマ(教理)”は、“おしも(性器秘所部)”崇拝である。
 ヤプーたちは、実の所。そのアマテラスのお陰で、良質で従順。精神力の強い、立派な“家畜人”が育成されている位なのである。






 間もなくアンナは、馬鹿にしたように、セオドラに言い返した。
「ふん!!!!“じんじろげ(下の毛)ロード(神)”めが!!!!」

 これぞ。《おまんこ、陰毛を笑う。》である。“セオドラ”は、地球においては“十一面観音”を、ヤプー族たちの前で演じる女性である。
 それゆえセオドラは、ヤプーから、“仏教のロード”として崇拝を受けている。

 しかしその“ドグマ”は“陰毛”であるという……。

 なぜなら“ホトケ”とは《ホト(おまんこ)のケ(毛)》という意味だからである。
 して、セオドラの毛は“金髪”であったので、《“仏像”これ見たり“黄金色”》であり。
 また仏像は“後光(ヘイロ・パラソル。用足しの際の空飛ぶ芳香器)”をさしているのである。




 ちなみに“軍人”たるセオドラには、正装の時には必ず“付け髭”を技とらしく付ける習慣があり。
 真っ黒の細いピンと立った、地球の“近代画家・ダリ風のピンカール付け髭”を“十一面観音”の絵のように、しっかりと鼻の下に生やしている。


 セオドラが言う。
「前回の別のパーティでも、確か貴女は。玉抜き宦官の“レイノオ”とベアで来てたわね。パーティは2人連れですものね。おお〜“宦官と来る”ですってー!!!! それもイースでは“超下級貴族”の“モンゴル系人種”を連れて……。それからあんた、自分のペットに、糞畜なんかを2匹も連れて来るなんて恥ずかしい。」





 見ればアンナは2匹の、全裸のプライベートセッチン兼護身用のロー・ヤプーを連れて来ている。1匹は全身に蛇の刺青。もう1匹は、全身に菊の花の刺青を入れている。
 2匹とも、強靭な肉体を持つ筋肉質の美青年たちである。

 アンナは、この2匹に自分のプラチナ・ブロンドの陰毛で編んだ、パンティを顔面に被せている。


アンナ「見ての通りよ。だけど、ちゃんとパンティは履かせてあるわよ。1つは小便器。1つは大便器よ!!!! でも結構綺麗なヤプーでしょ。これ、私のお気に入りなの。自分専用のを持って来て何が悪いのよ!!!! おお〜、客用のセッチンの使い回しなんて、なんて汚らしい。

 大抵のパーティ用セッチンって、100人以上の汚物を、たった数匹で使い回しなのよねー。
 それから、私は“黄金”の処女よ!!!! レイノオは信頼のおける、私の秘所よ!!!! モンゴル人のどこが悪いの!!!! そういう貴女は、今回は誰と来たの。毎回パーティと聞けば貴女は“男”を変えて連れてくるのね。」


セオドラ「浮気は女の甲斐性よ!!!! うらやましいでしょ。今回のは超売れっ子の歌手よ。」




 2人のいがみ合いの中に、丁度、今回のパーティの主催者ポーリーンが、クララを連れて挨拶回りに回って来た。
 クララは左手にウイリアムと手をつなぎ。右手にロー・ヤプー、リンの鎖付きグリップを持っている。




 ポーリーンが2人の間に、口を挟んだ。
「クララさん。この方が、セオドラ・シャーニンガム大将。RSFの指令総監。」

クララ「まあ。セシル・ドレイパァさんのご主人(女)の上司で、いらっしゃる。」
セオドラ「ふん!!!! さっき、紹介を聞かされてて、貴女。確か“記憶喪失”だって聞かされたのだけれども。結構良く解っているじやないの??!

 確か“探検家”だそうね。それに貴女……。私の部下の“ブラディ・メアリ少将(注・軍隊の中でのあだ名。本名はメアリ・ドレィパァ)”の弟のウイリアムと会って、もう、2日目には早々に結婚発表だってそうじゃないの。

 あんた。結構“男”には“手が早い口”ね!!!! 私。“いけてる女”は大好きよ!!!!」

 セオドラは、見るからに気位の高そうな感じの女性である。

 しかし、アンナとは仲が悪そうな……。
 否。何かしらライバルっぽい感じがする。

 賞味。セシルの妻、メアリにも、セオドラは少し苦手な上司タイプであるようだ。

クララ「これからも、よろしくお願いしますわ。セオドラ大将!!!!」

 握手を求めるクララの手に、セオドラは手を握って答えた。
「おう。……可愛いやん。若いし。……お前。RSF(宇宙軍)に入らないか!!? みっちりしごいたるで!!!! いっぱしの骨の入った“軍人”に仕立ててやるぞ!!!! 今。RSFの我が軍は、敵対“クリンゴン帝国”と交戦中じゃ!!!! いまいち我が軍には“知恵のある奴”が、おらんでの!!!! 悪戦しとる!!!!」

クララ「……。」

 間もなくセオドラとクララの間に、アンナが、気の抜けたような口調で口を挟んだ。
「止めとき、止めとき……。戦争行為なんて野蛮。野蛮……。平和が第一。」

 すると、セオドラはアンナに言い返した。
「その“戦争”のお陰で、今の“100の太陽王国”。“イース帝国”があるのでわないか!!!! お前は、軍隊に対してもっと敬意を持つべきだ!!!! 不届き者っ!!!!」




 いつしか2人は、双方喧嘩腰である。ポーリーンは、クララを引っぱり連れ出した。

ポーリーン「優しいはずの十一面観音が、好戦的な宇宙軍司令官……。イース帝国の摂理に、神も仏もあったものじゃ無い!!!! セオドラ雷帝さまは……かつてロシア王国の“イワン雷帝”さまの再来とか……そう、言われながら。“多量殺戮の王者”よ。

 女並にやる事は、男より、超ど派手。セオドラは最もダーティなる“戦法”を好むとか……。」


 ポーリーンは。そう言いつつ、クララを連れて別の小グループへとおもむくべく歩き出すと、クララがふと、小声でポーリーンにたずねた。
「ねえポーリーン……。ちょっと聞いても良いかしら??!」

 その場で立ち止まる、ポーリーン。
ポーリーン「何??!」

クララ「ここだけの話……。ポーリーン。おととい“私の足の指”。治した??!」
ポーリーン「そ、……そう治したわよ。いらっしゃい“イース帝国”へ。」

 と、慌てながら答えるポーリーンに、クララが続けた。
「そう、そうだったの。」
ポーリーン「そうなの……。」


 するとそこに、ウイリアムが不思議そうに、姉ポーリーンにたずねた。
「ねえ、姉さん。今の何の話??!」
ポーリーン「何でも無いのよウイル……。」


クララ「私。私はこのまま、40世紀に居座りたいとは思っているのだけれど……。」
ポーリーン「クララ。帰っちゃ駄目!!!! 帰っちゃ駄目よ!!!! 今日折角、パーティでウイリアムとの結婚発表をしたばかりじゃないの!!!! 絶対帰っちゃ駄目よ!!!!」

 そこでウイリアムも、すかさずクララに言い込めた。
「そうだよ!!!! クララ。もう帰っちゃ駄目だよ!!!!」

 するとクララは、リンの顔色をチラと見ると、またポーリーンに言った。
「こいつを“20世紀”に、返さなくちゃ……。」

 再びリンの顔を見つめてクララ。リンの表情が、いかにも悲しそう。

 クララ思う。
『こいつ、いかにも寂しそうだわ……。』

ポーリーン「“20世紀”なんて、もう帰らない方が良いわ!!!! 直ぐに“第3次世界大戦”が勃発するのよ!!!!“ソビエト連邦”が“生物兵器”を全世界にまき散らすわよ!!!! このまま、貴女はここに居なさい。……ねえクララ。」

クララ「えっ?? やっぱり来るの??!“私の世界”にも……??!」
ポーリーン「そ、そうよ。来るのよ“世界の終わり”が……。貴女は“20世紀”で“死ぬ事に”なっているの……。リンもよ……。」

 ……すると間もなく。ポーリーンは、咄嗟に話し出した自分の言動に黙り込んだ。
『あっ!!!! しまった!!!! クララに“嘘”ついちゃった!!!!』




 念を押して聞くクララ。
「ねえ、ポーリーン。そうなの……??!」

 クララの突然の質問に慌てて返事で答えるポーリーン。
「え、そう、そうよ。」


 その場で心配そうに黙り込む、リンとウイリアム。

 しばらく無言の時間が続いた。寂しそうなポーリーンの眼差し。そして、真実を知りたいクララ。
 しばらく2人の目と目が見つめ合っていた。


 ポーリーンは、間もなくして言った。
「さあクララ。パーティを続けましょう。」



 クララはその後。ポーリーンの紹介で、多くの将来親友になるべく人物たちと出会う事となった。




 ポーリーンの邸宅の、となりに住まうご主人(女)。えび茶色の髪の少年、チャールズ・マックの母“アグネス・マック侯爵”。

 全眼球を“ヤプー”から貰ったとのことで、「盲目物語」を書き、小説家としての地位を築いた著名人“ソニア・アヤック準男爵”。

 18歳の“ダイアナ・ウイリス侯爵令嬢”は、イース帝国の狩猟協会の会長である。
 そして、その副会長を勤める齢800歳の大物“ジュリー・カール伯爵”。

 先程のセオドラ・シャーニンガムのいるRSFの副司令官“ユージェニー・ローガン子爵令嬢”、彼女は、クララと同じ位の年齢である。

“タイム・ミンストール(時間吟遊詩人)”の“セーリーン・ハイネス”、彼は女王陛下の男妾の息子、彼はまた中国の古代詩人・李白でもあり、またシェイクスピアに出て来る、妖精パック、その人である、という。

 ダイシー・キャノンを造った科学者、ジュリアン・バッコール(旧姓)。の主人で、アクリス社の社長“アン・バクスター伯爵”。

 たち……。
 総てがVIP、総てが貴族である。
 クララは今回を足がかりに、貴族社会の仲間入りを始めるのであった……。





 そして。パーティのお開きのあと、ポーリーンは、独り静かにこう言った。
『私は、“クララが好き!!!!”。物凄く好き!!!! 手放したくない!!!! 私は自分の“大切な人”に“嘘”をついてしまった!!!! クララは本当は、自分の産まれた時代へ帰りたかったのじゃ無かったかしら……?? これは“友情”とか“人類愛”なんてものじゃない!!!! 本当の“愛情”なら、相手の心を“思いやって”手放せるはず!!!! 

 寂しければ、また、“ヨット(小型時間飛行艇)”に乗って、会いに行けるじゃないの!!!!“ポーリーンの馬鹿”!!!! 私は“本気”で“クララ”に恋愛をしてしまったみたいだわ!!!! どうしたら良いの??! ああ。胸が痛む……!!!!』



 ちなみに、“平均寿命800歳”を数える、“イース人”にとっては。“同性愛”など、珍しい事ではないが。ポーリーンは未だ30歳を数える、まだむけたての若者であり、“同性愛的感情”などは、彼女にとっては始めての体験であった。

 ポーリーンの、内的感情の動揺や迷い。酷い心の痛みは、他にも増して激しいものなのであった……。





『雨は優しきものなり。全ての罪をも流してしまう。』シェイクスピア「ベニスの商人」

 今日の午後……。いつまでも水晶宮の外は、雨が振りつつ止まぬのであった……。 2001'3'27' 

 

原文・2001年月。
2016年5月 アップロード。





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