ACT2“真・家畜人ヤプー・リリスの帝国編”第16話、第17話


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ACT2“真・家畜人ヤプー・リリスの帝国編”第16話
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 昔昔大昔、世界の始まる頃“大地の女神・ガイア”には、愛する2人の“夫”がいた。
 1人は“大空の神・ウラヌス”。もう1人は“海の神・ポントス”であった。3人は大いに喜び合い、多くの“神々の先祖達”を、母なるガイアの身体から産み出した。


 ある日。ウラヌスは、悪いことを思い立った。それは、ポントスの子息達を独り残らず、封印することであった。それには理由があった。ウラヌスにとっては、ポントスの子息達が酷く醜い姿をした者のように感じられたのだ。

 ウラヌスの子達は、皆“ヒュウマノイド”だったのに対して、ポントスの子達は、大抵が皆“半獣半人”もしくは“恐ろしい化け物”のような姿をしていたからだった。



 間もなくして、ウラヌスの“ポントスの子息の封印”が開始された。
 ……次々とポントスの子供達が、“ダイダロスの底”へ封印されてゆく。

 それを傍目で見つめながら、嘆く女神の姿があった。“大地の女神・ガイア”である。
 ガイアは、突然のウラヌスの“封印行為”のために毎日のように泣き暮らした。

 そして遂にある日のこと……。ガイアは残された我が子達に、自分の嘆きを訴えた。
「ウラヌスが、お前達の“兄弟達”を次々と“封印”している。私はそれが悲しくて仕方がない。どうか誰か!!!! 私の夫、ウラヌスの乱暴行為を止めて頂戴!!!!」


 嘆くガイアの気持ちに同情する子息達は多かった。しかし、どの子も“父神・ウラヌス”の討伐をいぶかった。
 間もなくその中から、ただ独り勇敢にも、母の“ウラヌス討伐”を引き受けた子供がいた。

 それも、その子は“ガイア”と“ウラヌス”の間に生まれ出た末子。“時間神・クロノス(サタン)”だったのだ。

 彼は、自分の実の父に大鎌をふるい、その逸物を切り取った。
 そして。“クロノス”は自分の“実の父”に、こう言い放った。

「お前の、その天空にまでそびえる“逸物”が、お前の心を“思い上がらせた”のだ!!! 私は、お前をこの世から追い出し、“ポントスの子息達”を皆解放する!!! たとえお前が、父神と言えど、我々には“自由意志”があるのだ!!! それは何人にも拘束する権利は無い!!!」

 その後。“ウラヌス”は自分の“逸物”が無くなった姿に恥じると、天空の彼方へ消えて行った。

 そして、今ひとつ、その場には1個の悲しい“ウラヌスの逸物”が残った。
“ウラヌスの逸物”は、その後、広大なる海、ポントスの胸の中へ納まった。

 そして、棄てられた“ウラヌスの逸物”は、心優しいポントスの子息達から、多大なる同情の念を受けた。
 ポントスの子息達の姿は確かに、おぞましかったが、その心は実に優しかったのだ。



 やがてポントスに落ちた“ウラヌスの逸物”は“女神”として、再び甦った。
 その名も“アフロディーテ−”。“愛欲と恋愛の女神……”。海の白い泡から生まれた女……。

 彼女はエーゲの深く青い空と、地中海の真っ青な輝きとを全身にまとい生まれ出た、最上の女だった。
 それも“彼女”こそは、地上の全ての神々に祝福されて、この世に生まれ出た“最上の美女神”であったのだ。

 しかし、この女神の心の内には。かつての“ウラヌス自身”が持った、我が子“クロノス”に対しての“強い恨みの念”のみが込められていたのだった。


 間もなくして、“アフロディーテ−”は我が心にこう誓った。
「私と、私の父を辱めたクロノスが憎い!!! そしてポントスの子孫達が憎い!!! 私は今“女神”として再びこの世に生まれ帰って来た!!! これから私は、私の父を戒めた多くの神々の子孫共に多くの“混乱”を与えてやる!!! それは、私の“女神としての力”の復讐であるぞ!!!」



 かくして“愛の女神・アフロディーテ−”は、神々ならず人間までをも、自身の“女の美貌”を武器に、“混乱”と“災い”と“争い”、そして、自分自身の女神としての全ての権限を、再びこの手に取り戻すことを目的に、誕生したのだった。
 間もなく彼女は、男の神々の権力をも楯に、裏でコントロールする地位さえ、その手に隠し入れたのである。



 
“ 天空の神・ウラヌス”を討伐した“時間神・クロノス(サタン)”は、のちに数億年後。わが子“雷神・ゼウス(メタトロン)”によって、“ダイダロス(魔界)”へ封印されることとなった。
 それ以降クロノスは、自分を裏切った神々はもとより、神々に造られし全ての“人間達”までも呪うようになった。


 しかし、その背後には“美女神・アフロディーテ−”の見えない糸に操作されたる“男の神々”の健気なる姿があった。

“アフロディーテ−”の別名を“ウラニア(天空の女神)”ともいう。
 理由はアフロディーテ−が、クロノスに裏切られたウラヌスの化身だったからである。

 彼女はその後。信仰心を得るために、キリスト教世界での“マリア”の前身ともなり。
 また“ウラヌス”が、“天上界の神”であり。そして“ユダヤ教・キリスト教世界”においての“造物主・ヤハウェイ(エホバ)”と讃えられるに至ったことを、またも知る人間は少ないことであろう……。

(イース帝国版・ギリシャ神話「ヘシオドス・神統記」より)






原文・2001年2月3日。絵・文の写し・2004年6月 製作。




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