“家畜人ヤプー・リリスの帝国編”ACT1・第10話、第11話
★ΨΑΛΜΟΙ β´(プサルモイ デュオ・詩編2)★
貴女は私。遠い世界から来たりしか?
多くの者が、私を見ん。
私の居場所は何処なりや?
この世が それとも 極楽か……。
原文・2001年2月3日。絵・文の写し・2003年8月9日製作。
★ΧΛΑΛΑ α´(クララ・半女神クララの書)★
地球西暦3970年……。
(ヤプー暦紀元1748年……。)10月14日。
早朝の頃……。ポーリーン侯爵の邸宅の客室にて。
クララ・フォン・コトウィック伯爵は、ある事を思い巡らせながら、ゆったりと朝湯に浸かっていた。
“パピュ−ム・ミュージック・バス(香楽浴)”。これが、今彼女が浸かっている、“朝湯”の名称である。
これは、温かい湯舟の中に身体を仰向けに横たえ、良い香りを嗅ぎながら温浴を楽しむ嗜好で、いわゆる所の“アロマセラピー”である。
香りは、時間と共にさまざまに香りが変化する。草原の香り、森林の香り、潮騒や、こんこんと涌き出る泉、滝つぼのオゾンの香り……。
それはあたかも、優しい“音楽”の調べの如くに、“揺らぎ”を持って、香りのシンフォニーを奏でるのである。
湯舟の中で、細かい無数の泡が弾け、身体のいたる部分に小気味良い感触を与える。
そしてまたその細かい泡は、水槽の水面でジャワジャワと小さな音をたてながら水面上に、さまざまの細かい波を造り出す。
泡の中に、香りがしみ込ませてあるのだろう……。水槽の箇所箇所から湧き出る、細かい泡には、それぞれ違った香りが、湯舟の蒸気と共に沸き上がって来るのだ。
クララが浴室に身体を横たえ、しばらくしていると……。
間もなくして“浴槽矮人(バスタブ・ミーズ)”達が、1ダース程。手に手に長い柄の付いたスポンジを持ち、整列して歩いて来ると、とぷんとぷんと、クララの入っている浴槽の中に1匹づつ潜り込んでゆく。
どうやらこの子達は、クララの身体を洗ってくれる、矮人(ピグミー)達であるらしい。矮人達の手さばきは、実に巧妙かつ絶妙であった。
……そこで、ふと、クララの頭の中では、1つの事件が思い出されて仕方が無かった。
クララの頭の中で、1つの事件が、何度も何度も、浮かび上がって来る。
『リニチロが、私を“殺そう”とした!!! 私を“絞殺”しようとした!!! リニチロが……!!!』
そう何度も思い返すと、クララの両目から、おびただしい程の涙が、何度も何度も流れ出して来て、止まらなかった……。
クララが浴槽の中に浸かったまま、ふと眼を開けると、眼の前には1匹の“浴槽矮人”が、心配そうに浴そうの水面から首を出し、クララの表情を覗き込んでいる。その表情は、実に愛らしくあどけなかった。
クララは、手の平にその矮人を乗せてやりながら……。
「貴女は、私の事を心配してくれているのね……? 貴女は優しい子ね。」と、まんじりと“矮人”の姿を見つめていると、“ぷっ!”と“激励の唾液(サリバ)”を吐き付けてやった。
間もなく矮人は、さも嬉しそうな表情をすると、クララの“唾液”にしゃぶり付いた。
クララは、矮人が、いかにも嬉しそうにクララの唾液をしゃぶり続けている姿を見やりながら、
『この“子等”は、本当に“可愛い”子達ね……。』と、心から嬉しく思った。
間もなくして、クララが浴槽の水面から、足先をひょいと出して見て奇異に思った。
と言うのも、確かに自分の足の指は“5本”あったはずなのだが、何時の間にか“4本”に変わっていたのである……。
クララは思った。
『私の“足の指”は、いつの間に“4本”になっていたのかしら……? 私は今、夢でも見ているのかしらね……?!』と。
しばらくして、クララが朝湯を済ませて浴室から上がると、長身の宦官の“グラウコス”達が2人程、クララの為にタオルと新品のガウンを手に持ち、待っていてくれた。
クララは“グラウコス”達に「ありがとう」。と言うと、
彼等に自分の濡れた身体を拭かせてやった。
……その後。
クララがふと、先程まで自分が眠っていたベットの頭の当たりに飾ってある“矮人ヤプ−”の“7匹”入った、日本風古典型小型漁船“宝船(トレジャー・シップ)”の置き物が眼に入った。
クララはそこで、ふと思った。
『確か、この“矮人ヤプ−”達が、私の“命”を、狂った“リニチロ”から救ってくれたのだったわね……。確かこの“宝船”は、ポ−リーン侯爵の甥“ウイリアム”からの“昨日の晩”に頂いた“贈り物”だった……。ありがとうウイリアム……。御免ねリニチロ……。』
ちなみに、この矮人ヤプ−が“7匹”乗せられた“宝船”の置き物は、一種の自動演奏装置たる。“オルゴール”のような物であった。
“彼等7匹”は、クララ伯爵の危機を知るや否や、一種の“睡眠派音楽(ナルコティック・ピストルウエーブ)”を、リニチロとクララに聞かせて、2人を“瞬時にして眠らせ”、クララを窮地から救ったのであった……。
しばらくの時が経ち。
客間から出て来たばかりのクララの前に、突然、ポーリーン・ジャンセン侯爵の兄、“伯爵夫人・セシル・ジャンセン”が走りやって来て、困り果てた表情で、クララ伯爵に言い詫びた。
「クララ嬢……。これを、私の“早合点の記念品”にして下さい……。」
不思議に思う、クララの手元に、セシルはある物を手渡して、
「昨日。貴女の“ローヤプ−のペット”が、貴女を襲ったそうですね……。
その後、姉のポーリーンが、その“ペット”を“予備監”へ入れるように指示を“グラウコス達”に出したそうですが、私はそれを勘違いしまして……。
無理矢理、貴女の“ペット”を“特別監”に入れさせまして……。
……ヤプ−を特別監に入れますと、そのヤプ−は自動的に、ペニスごと“去勢”させられるシステムとなっておりましたもので……。」
クララがセシルから受け取った物を、まんじりと手の平の上に乗せて見つめると、金色の唐草模様の入った綺麗に設(しつら)えられた、馬用の鞭のグリップ(把手)のような物であった。
よく見るとグリップには、美しい文字で、
「“鞭を惜しめば、ヤプ−を失う。”」と、英語で小さく刻まれてあった。
そしてまた、よく見ると、グリップの先に“肌色のしわしわになった革のような物”が、垂れ下がり付いていた。
クララがぼそりと、セシルに言った。
「すると……。これは、“リニチロ”の……。」
セシル「はい。“ペニス”でございます……。私は、あとで“勘違い”に気が付きまして……。せめて“これ位はさせて頂かないと”と、思いまして……。夕べ一晩かけて、慌てて職人に造らせました。これは“ヤプ−用の鞭”でございます……。」
セシルは、クララの手からグリップを取り上げると、
「これは、このようにして、使うのでございます。」
と言いながら、グリップに付いている、小さいボタンに指を掛けて見せると、瞬時にしてグリップの先端に付いている革が、鞭らしく“しゃきっ!!!”と伸びて、形良く形成された。
長さは約1メートル程、いかにも丈夫そうで、使い易すそうな“鞭”に変化した。
間もなく、セシルは嬉しそうな口調で言葉を続けた。
「これには、特別な薬品で“コーティング”されていますので、これで“1鞭”して御覧なさい。奴め、“余りの痛さ”に飛び上がりますよ!!」
クララ「リニチロ。自分の“逸物”で、打たれるのね?!」
するとポーリーンが、間もなくそこへやって来て、セシルに口を挟んだ。
「……だからよく“効く”んじゃない!!」
クララはしばらく、セシルが設えてくれたリニチロの“ペニス製鞭”をまんじりと見つめながら、呆(あき)れて……。
「いいんですよ……、セシル夫人。たかがヤプ−の事で、そこまで恐縮されなくても。」
ポーリーンがクララに言った。
「朝のソーマ(霊茶)が終わったら、“畜人舎”へ行きましょうね。丁度“畜人戸籍登録官”の方がみえているわ。貴女のリニチロを、早速“畜人登録”しなきゃね。」
クララ「リニチロを“畜人戸籍登録”に、ですか……。」
ポーリーン「あのヤプーが、“貴女の所有物”である事をまず、“登録”しておかなきゃ!! でないと、誰に、“盗まれ”ても文句は言えなくてよ。」
1時間程度の時間が過ぎた。
クララが、畜人舎におもむくと、そこには“畜人戸籍登録官”なる、知性的な風貌の中年女性が、独りクララが来るのを待っていてくれた。
畜人戸籍登録官は、室内に設えられたモダンなテープルの前に、クララを腰掛けさせると、自分もクララと向き合って腰掛けた。
登録官が言った。
「女王の御名において、畜人戸籍登録に先立ち、貴女。“クララ・フォン・コトウィック”に、2、3、質問を致します。……あのヤプーを捕獲したのはいつでしたか?」
クララ「1969年4月……。……そう。あの日は復活祭の1週間後の日でしたわ……。“永久(とわ)に貴女のもの”と、刻み付けた“婚約指輪”を交換し、リニチロが私に誓った日だわ。」
とクララが喋り出すと、丁度、畜人戸籍管理官とクララとの間に、身長15センチ程度の“矮人”が、カルテ(書類)の上にペンを担いで立っており、見る間にクララの言葉をカルテの表面に、するすると見事な文字で書き出していった。“1969年”と……。
クララは、またしてもここで、愛くるしい“矮人ヤプー”を、眼にしたのだった。
登録官「それでは、クララ嬢。貴女の所有権は完全ですか?」
クララ「はい。リニチロには私以外に、友人は持っていませんでしたから。」
登録官「将来、これに異義をとなえる者は、無いであろうことを誓えますか?」
クララ「はい、間違いございません。」
登録官「これを何と“名付け”ますか?」
クララ「“リン”。」
登録官「畜人ナンバー“TEVIN(地球捕獲)1267”“CC(クララ・フォン・コトウィッグ所有)1・RIN”“DNAタイプ・WN1”声紋および指紋、光彩、眼底全て記録済。現在、年令23歳2ヶ月。身長1メートル63センチ。体重63キロ……。
これで、全てよろしゅうございます。ではクララ嬢。ここにサインなさって下さい。このカルテと引き換えに、このヤプーの“鑑札(登録済み札)”をお渡しします。」
クララが、畜人戸籍登録官の差し出す、カルテに自らサインを書き入れると、登録官は、
「女王陛下の御名において、畜人戸籍局地球支局欧州分室第5特別区、第1係登録番号1267号、土着ヤプーの捕獲を登録致します。」と、はっきりした口調で誓い。
早速クララに、作りたてのリニチロの“鑑札”を手渡した。
するとポーリーンは、嬉しそうにクララに、
「さあ、あとは“権利宣言の鞭”の儀礼にて、お終いね。」と言うと、
クララは不思議そうに、
「“権利宣言の鞭”……?! ですか?」とたずねると、
ポーリーンはクララに、
「そうよ、“勝利宣言の鞭”よ!!“貴女”は、これから市街地にある“ヤプー畜大聖堂”へ“リン”を連れて行くの。
そしてそこで、“私達”を“立会人”として、“リン”の“処女の聖地”たる、リンの“背中”に“鞭”をふるい、“権利宣言”の儀式を行わなければならないの! そこで始めて貴女の“リン”は、“貴女の所有物”として“イース世界”で認められる事になるのよ!!!」
クララの眼は、一瞬驚きに満ちて、丸くなった。
しかし間もなくして、クララの気持ちも、丸く収まった。クララはこう思った。
『そうだわ!!!“リン”はやっぱり“家畜”よ!!!“亜人間”だったんだわ!!!“リン”は、やはり私が“鞭”を振るってこそ、役に立つ“家畜人”だったんだわ!!!』
そう思い直すと、クララの心の中に一筋の光りが差し込んだ。
クララの手に持つ鞭が、瞬時にして“ぴん!!!”と延びるや、“びゅん!!!”と振るわれ、小気味良い音を立てるのだった。
原文・2001年2月3日。絵・文の写し・2003年8月9日製作。
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