“家畜人ヤプー・リリスの帝国編”ACT1・第9話、第10話、第11話

ACT1・5
★ΦΩΡΗΝ(ポーリ−ン・女神ポーリ−ン記)★
★ΨΑΛΜΟΙ β´(プサルモイ デュオ・詩編2)★
★ΧΛΑΛΑ α´(クララ・半女神クララの書)★



“家畜人ヤプー・リリスの帝国編”ACT1・第9話


★ΦΩΡΗΝ(ポーリ−ン・女神ポーリ−ン記)★

 
地球西暦3947年……。
(ヤプー暦紀元1725年……。)8月12日。

 それは、“ポーリ−ン・ジャンセン侯爵”の、幼い子供の頃の事だった。
 彼女は、“母・アデライン卿”と共に、辺境惑星地球へ仕事上の偵察旅行がてら、やって来た頃の事だった。当時“母”の別荘邸宅も、地中海沿岸の高級住宅街の高台に建っていた。

 それは、母の仕事と仕事の合間にあいた、ほんのいっときの事であった。

 その日ポーリ−ンは、いつものように、家庭教師からの勉強とは別に、“スレイブ・グラウコス(緑の奴隷、緑奴)”達と共に、ごく古典的な集積回路で、宇宙船の立体模型を造って一日中遊んだり、“バ−チャル・リアリティ”を使って、宇宙船の操縦をして遊んだりしていた。

 その日、母は、突然何を思ったのか、地球の地元奴隷の自然動物保護観察官達から、採れたての“天然の鰯(いわし)”を数匹もらって帰って来て、自宅のコック達に焼いて料理させた物を、その日のディナーの1品にと、“愛娘・ポーリーン”に出してやった時の事だった。



 生まれて始めて見る“焼き立ての鰯”を見て、ポーリーンは悲鳴を挙げて叫んだ。
「何?! これ?!“お母様っ”?! これって食べられるものなの?!」

 母はポ−リ−ンが突然、“焼きたての鰯”を見て、泣き出したのを見て驚いて言った。
「ポ−リーンたら、これは食べるものよ。“魚”と言う生き物で、食べる物よ。」


 
母は“若干450歳”余りの年令である。
 地球には、もう何度も足を運び
“食用ヤプ−”以外の食品が、地球や銀河に、ごまんと存在している事を、知り尽くした女性であった。

 母は、遠い昔、地球に
“第3次世界大戦”なる、全面的な生物兵器や核戦争が起こり、地球が砂漠と化した歴史を“コンピューター・ライブラリー等”で観て、知っていた。

 あれから、2000年ばかりの年月が経つ……。
 今では、“2000年前”に比べて、地球に生息する“生物の種類”が、極端に減って来ている事も知っていた。
 しかし、砂漠化の極端に進んだ今の時代にあって、
“山海の珍味”の生き残り達が、地球のあちらこちらで“イース人”の手によって、“再復活しつつある”ことも確かであった。

 核爆弾の
“放射能”の惡影響も現在では完全に消え、“オメガウイルス”の猛威も無くなっている。
 現代は、“テクノロジー”の発達で、オゾンホールも地球全体の1/4までに戻りつつあった……。
 あとは、地表面に残る砂漠化の緑化の問題が、多く残されていた。





 若干7歳のポ−リーンが、“天然の焼き魚”を前にして、泣き出したのも無理は無かった。
 彼女にとっては、“本物の魚”“眼”にしたのは、これが生まれて始めての出来事、だったのだから……。

 ちなみに、ポ−リーンは、銀河世界各地で捕れる“果物”や、柔らかい“食用ヤプ−”の肉を食べる事が、大好きな娘だった。

 ポ−リーンは母に訴えた。
「この子。“食べる”の?! 何だか身体(からだ)を焼かれて可愛そう……。」

 母は、我が子の言葉に奇異なる感覚を感じた。母は、愛娘に言った。
「ポ−リーン、“魚”は食べられるために居るのよ。私達はね、“魚を食べる”生き物なのよ。」

 ポ−リーンはその後。しばらく魚を見つめていると、その魚を食べてみる事にした。
 頭付き、骨付き、ヒレ付き、鱗付き。正に焼いた魚は食べにくい……。

 ポ−リーンは、自分のフォークとナイフを両手に持ち、不器用ながら、散々、鰯の焼けた身体をかき回し、ばらばらにしながら一口、口の中へ運んで食べて言った。
「味。苦ーいっ!!! 私。“ヤプ−の肉”の方が、美味しいっ!!!」

 母は、ポ−リーンの言葉を聞いて不思議に思った。
『この子ったら、“魚の丸焼き”は食べれないのに、“矮人ヤプ−の丸焼き”は平気で食べるのよね……?! 確かに“医食同源”……。“人間の健康”のためには、“人間の身体を食べる”のが一番良いと言われるわね。でも、亜人間“食用ヤプ−”の肉も苦いのよね……実際。』

 母は、愛娘ポ−リーンにもう一度たずねてみた。
「ねえ、ポ−リーン。貴女はなぜ、魚よりヤプ−の肉の方が好きなの……?」

 ポ−リーンは答えた。
“魚”は、とても食べられるのを嫌がっているの。怖がって、嫌そうな顔をしているの。でも“ヤプ−”は全然嫌そうな顔をしていないの……。だっていつも、嬉しそうな顔をして、お皿の上に乗っているのよ……。」

 そこでポ−リーンの母は思った。
『あらまあ。この子は、なんて優しい心を持った子供なのかしら?!“食べる魚”なんぞに“同情”なんかをしているわ……。でも、この子にとったら“ヤプ−”はこの子よりもっと“優しい心”を持った、生命体なのかもしれないわね……。』と。

 そう思うと、ポ−リーンの母“アデライン卿”の胸の中が、何ゆえにか熱い気持ちに満たされるような感覚に陥るのだった……。

 アデライン卿は、ぽつりと言った。
「ヤプ−達は、“造物主”が“イース人”に下さった“マナ”かもしれないわね。」と、

 ちなみに“マナ”とは、「旧約聖書・エクソドス」に出て来る“造物主”なる“神”が、当時、“飢えたる人間達”に与えてくれた“食品”である。
“マナ”とは、真っ白でふわふわした美味しい食べ物であり、非常に栄養もあったそうである。
 つまり
“ヤプ−”は正しく、イース人にとっての“神様”からの“愛”の“贈り物”なのであった。




原文・2001年2月3日。絵・文の写し・2003年8月9日製作。


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