○ACT3“真・家畜人ヤプー・リリスの帝国編”第35話○
イスラエルのウツという国に“ヨブ”と言う、“信心深い”資産家が住んでいた。
彼は。7000の羊、3000のラクダ、500の牛、500のロバ……、それに数多くの牧人たちと、小作人たちを所有していた。
その上。7人の息子と、3人の娘、それに本妻と数人の妾たちをも持っていた。
所がある日の事……。隣国からの強盗、殺戮。火山の噴火。地震に火事の天災で、彼の領地の全てと、彼の所有家畜の全て。そしてもヨブの10人の愛する娘と息子たちを全て失ってしまった。
今にして、ヨブのそばにいるのは、ほんの数人だけの小作人たちと妻たちだけであった。
しかし。還暦も過ぎたる賢老な“エホバの信者”ヨブは、
多くの“災害”にもめげずに、妻たちを励ますように、わざとらしく笑ってこう言った。
「どうせ“人間”は皆、“裸”で産まれて来るのじゃいっ!!!! “資産”を“失うた”からと言って、落ち込む事は無かろう!!!! きっと“エホバさま”が、助けてくれるわい!!!!」
しかし、災害はそれだけでは治まらなかった……。
間もなくして。当の本人が、突然。酷い“皮膚病”を患ってしまった。
皮膚がぶよぶよになって膨れた……。
そして全身が真っ黒になった……。
所々の皮膚が痛む……。それも真っ赤になって、皮膚が裂けて、裂けた所がまるで、ザクロの実の中のようになり。それも膿みも、薄膜が裂けた所からしみ出す……。
痛くて、ただれている箇所もあれば。治りかけて皮膚がめくれ、痒くてたまらない場所もある。
ヨブは瀬戸物をかち割ると、その瀬戸物の割れ口を痒い所に当てて掻きむしった。
夜になると。痒みは昼間の“100万倍”痒くなる。
朝方が恋しい……。ヨブは、ほんのわずかに、朝方になってのみ眠れるだけである。
まるで、体中の皮膚にウジ虫でもわいているかのようだ……。
あまりにヨブが、酷い皮膚病になってしまったので、妻たちがおびえた。
ヨブの顔面はぷくぷくに晴れ上がり、顔面は無くなった。どこが、眼だか、鼻だか分からない程だ。それに、体中が、穴だらけだ!!!!
それはそれは。ネフローゼとチアノーゼ。アトピー性皮膚炎とサンバーン(日射病)。ハンセン氏病とヘルペスとカポシ肉腫と天然痘を、一緒に患った程のえげつなさである。
それど所か、ヨブは時折高熱にうなされる事さえあった。
ヨブの正妻が、ヨブに言った。
「うちは突然“貧乏”所帯のどん底になってしまって、“病人”まで出してしまった!!!! 息子も娘も皆死んだ!!!! あんたの“エホバ”は、何故助けてくれないのだい!!??」
ヨブは言った。
「これも、エホバさまの思し召しなのだ……。」
間もなくして。薄情にも、ヨブの妻たちは、独り残らず“出稼ぎ”に出て行った。
ヨブは、だだっ広い自宅に、たった独りっきりになってしまった……。
ヨブはそこで、ぼそりと独り言を言った……。
「独りぐらい、儂の面倒を見てくれるために、家に残ってくれてもいいのにー。しかし、儂が貧乏のどん底にはまったのであるから、これも仕方が無いのお〜。」
と言いながら。ヨブはまた貧乏暇無しで、アトピーよう、水膨れように赤く腫れ上がった。全身の皮膚を、瀬戸物の割り口で、無心に掻きむしり出した……。
「痒いのおー。痒いのおー。痒いのおー。掻き過ぎたら、いかんじゃがのお〜。また、掻いた所が、痛くなるでのお〜。凄っごく、きっついステロイド剤でも欲しいのお〜。」
ヨブは、乾燥させた“ケシの実(モルヒネ)”と、少量の“キチガイナスビの種(スコポラミン)”を、ぶつぶつ言いながら、すり鉢とすりこぎ棒でごりごりと粉砕していると。
「あのう。“ヨブ”さんのお宅はここですかいの??!!」
と、玄関口で、人の声がする……。
ヨブは困った。実はすぐにでも、玄関へ行きたかったのだが、病気で潰れてしまった“顔面”を、知らぬ客人には見せたく無かったのだ。
しばらくすると、客人はもう一度、扉の外からヨブに声をかけた。
「いえいえ、お気は使わぬように……。私は。貴男が病気であることは、すでに存じておりますので……。」
すると、安心してヨブは、間もなくして客人の前に顔を出した。
ヨブ「まあ。お見苦しい所をお見せしてしもうて……。」
ヨブの、病気の顔面は、それはそれは酷かった。
それに比べて。“客人”は30歳位の“美しい女性”であった。髪は銀。瞳は赤……。肌の色はまるで透けるように白かった。長身細身。身長約1メートル85センチはあろう。
全身真っ黒いタイツに、ピンヒールのブーツ。左の胸元には“タイムパトロール官”の記章。タイツの頸は立ち襟であって“大将”の階級章を付けていた。
ツバの広い山高帽子に、黄色いサングラス。太腿のバンドに“フェイザーガン(位相光線銃)”を付けていた。
ヨブは息を呑んだ。初めて見る客人である。それも、今までに見た事も聞いた事もないようなタイプの人物である……。
ヨブは。多分、外国の人であろうと思った。
女は言った。
「私。“イース”から来ました。タイムパトロール官の“イザベル”と言います。別名“クロノス長官”とも、呼ばれておりますが……。」
ヨブ「へ??!! 儂“ヨブ”ですけえの。“イース”でっか??!!」
すると、女は指先を真下に向けて。
「今頃は、地球の裏側です。私の国は“シリウス星系”の第4惑星“カルー”です。」
ヨブ「げっ!!!!“地球の裏側”っ!!!!“シリウス”っ!!!!“クロノス”っ!!!! 地上は平たいものでっせ!!!! 裏側と言うことは“地獄”けえ??!!」
女は笑いながら言った。
「確かに“地獄”かもね……。これだから“古代人”は困るわ。」
ヨブ「すると、あんたは“悪魔”でっか??!! それとも“死神”でっか??!!」
クロノス「ふん!!!! 面白い事を言うわね。……ねえヨブさん。“地球”は丸くて“天蓋”に浮いているのよ、何も知らないのね。」
ヨブ「そして。地中の底は“炎”が轟々と燃え盛っているのだ!!!!」
クロノス「ふん!!!! 良く知っているわね。どこで習ったの??!! それ“マントル”って言うのよ。溶けた溶岩が、ねたくり回っている所よ、それ。」
女の真っ白な肌と髪は、まるで天使のよう。真っ黒い服と帽子は、まるで悪魔のよう。
ヨブ。恐れながらぼそりという。
「“エホバ”の使いなら、あんた。儂の“命”を“取りに来た”のでっか??!!」
クロノス「“エホバ”は嫌いよ!!!! 偉そぶった“男”だもの!!!! 私。“リリス崇拝者(“イース”では聖書に“タルムード”を使用している)”だよ!!!!」
ヨブ「“リリス”は“サタン”の妻だで!!!! お前“悪魔”だな!!!!」
クロノス「まあ……。クロノスは英語で“サターン”と言うなあ〜。」
ヨブ「げっ!!!! 儂は“信心深い”たちだで!!!! 儂。母ちゃんの“腎臓の上”に乗っかっていた時から、“エホバ”だけを信じて来たんや!!!!“月”や“太陽”にすら祈った事は無いねんど。“悪魔”に“命”なんか取られてたまるけえの!!!!」
クロノス「“腎臓”違うそれ“膀胱”の上や。あんたの居た所は“こつぼ(子宮)”。」
ヨブ「儂。醜い“皮膚病”や!!!! もうすぐ“死ぬ”ねん!!!! 儂どんな“悪い事した”言うねん!!!!“オオーマイ・ゴッド”!!!!“悪魔”が儂の“命”を取りにきよった!!!!」
クロノス「私、あんたの“皮膚病”。それ治せるて゜。治したろか??!!」
ヨブ「儂。“悪魔の人”には、治して貰いとう無い……。」
クロノス「“痒い”ん、ちゃうのん??!!」
ヨブ「か、“痒い”……。そ、そして“痛い”……。」
クロノス「“日焼けした所”で“アトピー”が出たさかい。えらい掻きむしってしもうて、いろんなバッチィ“バイ菌”が皮膚に入ってしもうたんや。時々“敗血症”起こすさかい“熱”も出るんや。
おっちゃん、それ“心因性(ストレス性)”やで。えらい目えにおうたんやろー。おっちゃんのん病気では、まだまだ死ねへん、死ねへん……。」
ヨブ「ば、“バイ菌”……。し、“心因性”……。“アトピー”??!!」
クロノス「おう!!!! これやさかい“古代人”は困る。」
ヨブはクロノス長官の前で、突然神妙な顔つきをすると静かに言った。
「お前は“エホバ”のように“雷”を落せるのか??!! 山を“噴火”させられるのか??!!“大地を割る”事が出来るのか??!!“洪水”が起こせるのか……??!!」
瞬間。クロノスの持つフェイザーガンから“きょん!!”と音がして。ヨブの足下に向かって一筋の光が放たれた。
間もなくヨブの足下に敷いてあった絨毯がまあるく焦げた。
クロノス「おっちゃん。もっと大きいのん落したろか……??!!」
ヨブ「い、今のん“稲妻”……??!!」
クロノス長官。左胸に付けた、記章を指先で、1回“ノック”すると。
「ヨブの玄関先に、一発“光子魚雷”発射したって!!!!」と言うと同時、
約0.3秒後……。
“バキャン!!!!”
瞬時にして、直径100メートル。深さ50メートルの円形巨大穴が出来た。
ヨブの、玄関先の敷居からそれること。30センチ……。ぜ絶妙……。
その場で腰を抜かし、座り込むヨブ……。
クロノス「おっちゃん。ここもう少ししたら、ここから“地下水”が滲み出して“池”になりよるで、良かったなあ〜。また家畜が飼えるで……。“雷”は、もっと大きいのんどうや……??!! 私、まだもっと、でっかいの落とせるで……。“悪魔”でも、これぐらいの事は出来るんやで……。」
ヨブ「ひ??!!“ひええーっ!!!!”“あ、悪魔”さまーっ!!!!」
クロノス「今度は、地面……。裂いたろか??!! 火山噴火もさせたるで!!!!」
ヨブ「も、もう十分でございます……。」
クロノス「私は、天空の彼方から来た。だから、地球の海の底も知っているぞ。月や太陽のそばまで行った事もあるぞ!!!! 地球で、一番高い山の万年雪で“苺味のかき氷”を作って食べた事もあるぞ!!!!“冥土の穴(ヤソクマ、タイダロス、ブラックホール)”も知っているぞ!!!!“リバイア・サン(ミラ系・ミッドガルド星の原星民)”も“ベルゼブル(スピカ・インセクター人)”も知っているぞ!!!! いっぺん、あいつらを“開き”にして、御馳走してやろうか??!! おっちゃん??!!」
ヨブ「悪魔は、“共食い”もするのですか??!! あな、恐ろしや!!!!」
クロノス「お前は、“エホバさま”が怖いから“崇拝”してるんじゃろー??!!」
ヨブ「……。」
クロノス「嘘ついたらあかんで、顔に書いてあるで!!!!」
ヨブは、間もなく、ぼそりと言った。
「あ、悪魔はん……。び、病気、治して貰われへんやろか……??!!」
クロノス「始めから、そーゆーたら。治したるのに……。おっちゃん頑固や!!!!」
間もなくクロノス長官。また黄金の記章バッジを叩いて、言う。
「“メディカル・トリコーダー”。一丁、こっちへ転送しておくれ。」
一秒後。クロノスの手の中に、子供の“お弁当箱”位の大きさの箱が光と共に現れる。
クロノス。ヨブの方を見ながら、診察して言う。
「ヨブさん。随分皮膚に“バイ菌”付いてまんなー。“便所掃除”してへんやろー。“起縁菌”がほとんど“大腸菌”ばっかりやでー!!!! 便所から出た後は、必ず手洗いやー。ほんでもって、牛の“腸内細菌”にまで嘗められとるでー。それで“皮膚”に“水腫”が出来とんのや〜!!!!“水腫”は無理につぶしたらあかへんで、針で突いてぺったんこにしてから“絆創膏”を張るんや。それから腫れは引くまで、お風呂に入ったらあかへんで……。」
クロノスが、“トリコーダー”を“ぴよぴよ”と慣らすと。間もなく、ヨブの全身の皮膚の“痒みと痛みが治まった”。
クロノス「今、身体の表面のバイ菌、全部取ったったわ。次に、皮膚再生したるわな。」
またも“ぴよぴよ”と“トリコーダー”を鳴らすと、見る間にヨブの皮膚が、“凸凹から、つるつるに変わった”。灰色の皮膚が見る間に、元の黄色の肌(ちなみに、ユダヤ人の皮膚も、ヤプーのごとくに黄色い)に戻って行く。
ヨブ「おっ!!!! つるつるや!!!! つるつるに変わった!!!!」
クロノス「ヨブ、お前……。“モルヒネ”と“スコポラミン”使うとったやな……。これ、あんまり続けると、“夢見るぞ!!!!(幻覚)”……。お前の製法の仕方、えらい“古典的”やから……。ホンマアカンで。ヨブ……お前……。随分苦労したのだなあ〜。私、同情するわ……。本当に“管理職”て“ストレス”溜まるさかい……。こと言う、私かて“管理職”やからな……。これからは、もう二度と、病気なんかなるなよな……。」
まんじりと優しい目で、ヨブの瞳を見つめるクロノス長官。
病気を治してもらった、喜びとクロノスの優しい眼差しとで、いつしかヨブの両目から、涙がどうどうと流れ出ていた。
そして。ついヨブの口から、“感謝の言葉”が溢れ出た。
「あ、有り難うございますううー。さ、“サタンさまーっ!!!!!!”」
クロノス長官は、嬉しそうに微笑みを浮かべながら、こっくりとうなづき。
「うん!!!! よろしい!!!!」と、一言言った。
その後……。“旧約聖書”に出て来る“ヨブ”は。
またもや、数人の妻たちから。7人の息子と、3人の娘が授けられ。140歳まで生き。
みずから“イース人”と、語る“クロノス長官”こと“魔神サタン”から、貰い受けた。大きな“ため池”を基に、再び。羊を1万4000頭。らくだを6000頭。牛1000頭。ロバ1000頭を持つ。以前の倍の規模の大資産家となったのであった……。
タイムパトロール司令官。クロノス長官の、その後は面白く無かった……。
“イース貴族”たる彼女は。偉そぶる男神“エホバ”が“大嫌い”だったので。“聖書の史実”を書き直させるために過去へ戻ったのだが。その後。彼女が“聖書”を何度読み返しても。“ヨブ記”の“史実”は実際。全く変わってはいなかったのである……。
「やはり、歴史化の書く“史実”は“変えられない”……。」実は、
“現実”を変えても、宗教家の“狡猾さ”までは変えられないのであった……。 2001'4'3'
○文献
★「リビング・バイブル」いのちのみことば社。
★「聖書物語」現代教養文庫625。
原文・2001年。
2010年10月 アップロード。
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ACT3・7
第35話★ΙΣΑΒΕΛ(女神イザベル記)★
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