○ACT2“真・家畜人ヤプー・リリスの帝国編”第43話○
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ACT3・12
★第43話★ΠΡΟΜΗΘΕΥΣ(祖神プロメテウスの書)★
◎ACT2“真・家畜人ヤプー・リリスの帝国編”第43話◎
◎ΠΡΟΜΗΘΕΥΣ(祖神プロメテウスの書)◎
紀元前十万年の頃。ヤプー歴紀元前10万2千年。夏……。
アンナが言った。
「兄さん……。随分食われたわね。“鳥葬”の“刑”とは、“本星の裁判”も、兄さんには、随分酷い罰を与えたものね……。
この辺は“猛禽類(鷹や鷲)”の巣窟だから……。」
プロメテウスは現在、大変な怪我を負っていた。
目玉がえぐられ。強化皮膚加工で施されているは言え、全身の皮膚が、猛禽類たちの爪で何度も何度も、引っかかれ真っ赤になってただれている。
腹の一部は皮膚加工が施されていないらしく、腹が裂かれ、内蔵がばらばらに引きちぎられ、はみ出していた。
彼は、その場に座り込んだまま、虫の息であった。
ここ、コーカサス山脈の岸壁付近は。“猛禽類の巣窟”である。
それゆえ。本気で彼の身体を放置し、さらして置くと、いくら“紀元40世紀”の未来人“イース人”の身体とは言え、まともに猛禽類たちの爪にさらされれば、10分と“命”はもたないであろう。
彼は、命に別状の無いきりぎりの状態で、猛禽類どもに身体を食い散らかされると、彼の身体の回りに透明シールドが張られ、猛禽類どもから遮へいされる仕掛けになっている。
夕方近くになると、オートシステムによって、彼の身体に付けられている短い鎖が、じゃらりと長く延びて。彼の“足元”に敷かれている、平らで丸い台座に埋め込んだ“肉体再生装置”が働き出し、元通りの“健康体”に“復元”されるようになっている。
とっぷりと日が沈む頃……。いつものように彼の身体に“再生作業”が始められる。
彼の身体に、緑色の“クローン再生”を目的、とした“復元光線”が照射されるのだ。
ちなみに、彼の“現実の肉体”は。現在“本惑星・カルー”の“科学アカデミー”内の“人工冬眠装置”の中に保管されていて、現在は“リプロデュース(コピー)”された、彼の借りの肉体の中に、彼の精神がはめ込まれ、“精神融合”させられていた。
しかし、肉体の耐え難い痛み、苦しみも。身体を食われる失望感と悲しさ、寂しさ、恐怖心などは実際。全て現実のものである。
プロメテウスは。台座に横たわったまま、じっと痛みを耐えしのいでいるようだ。
彼は、静かな声で、愛妹に言葉を返した。
「14万4千人余の人間の命を奪ったのだ……。“北アフリカ”から、中近東1円。そして“中央アジア”一帯にかけて、緑のジャングルを私は一瞬にして、砂漠に変えたのだ……。その罪は重くて当然だ。」
アンナ・オヒルマン侯爵は、プロメテウスの腹違い(卵。母親)の妹である。
現在のアンナは221歳。プロメテウスは300歳を越していた。
(ちなみに。“800歳”の“平均寿命”を誇る“イースの人たち”である。彼らの肉体年齢は、まだ十分若者であり、現在の人類の30歳位に相当する。)
アンナ「死刑制度の無いイースでは、“鳥葬の刑”は、最悪の刑罰だ……。兄さん……。実の所は、“エピメテウス兄”の“罪”を、独りで全部かぶったのだろう??!」
“エピメテウス”は、“プロメテウスの弟”で、なおかつ“アンナの腹違いの兄”である。
エピメテウスは過去に“タイムトラベラー法”を違反して、過去の時代。……紀元前15万年頃の“女性”と“結婚”をしている。
エピメテウスは、その後“刑罰”として、40世紀へ戻る事を厳禁とされ“15万年前”の、“石器時代”さながらの“原始的な生活”を強要された。
しかし、その後。
間もなく“氷河期の到来”が起こり……。
エピメテウスは、妻子たちを寒さから守ってやる必要に駆られ、その後。“イースの巡航時空挺”に密航し、未来機材“核エネルギー高炉”と、その発電機材一式を盗み出し、過去の地球、15万年前へ黙って持ち去った。
古代の女性と恋に陥った“男”。エピメテウス。
彼は、古代の時間に取り残された。
かつて、彼が生きて亡くなった時代は、紀元前“15万年前”である。
彼は古代の女と共に、800年生きたが、その後の“子孫たち”は、氷河期が終わっても“核エネルギー”に頼る生活を続けていた。
次第に、“地球上の人の人口”が“増加”を始めた……。
“未来の科学”を“乱用”するエピメテウスの子孫たち……。
彼らは“科学の恐ろしさ”を全く知らぬ。
そして、やはり人間は“知恵”を誇示する“生命体”である。
そして、人間たち同士の小競り合い……。
その後。生活を潤す“ウラニウム”の“核融合炉”は、間もなく“プルトニウム”を使い、
う“核兵器”と化すのであった。
時は、紀元前10万年……。この“第1期文明”と呼ばれる“人類の時代”に。起こってはならないはずの、“核戦争”が起こったのだった。
当時、地球に住まう人間たちのうち、人口14万4千人が死滅した。
半永久的に残るであろう“核廃棄物汚染”の実態すら、彼らは知らない……。
アンナは言った。
「私たちの兄“アトラス・アストライアス侯爵夫人(男妻が侯爵である)”と。“タイムパトロール総督”の私とで、後の事は任せて頂戴……。“核廃棄物質”は、私たち兄弟で処理をさせてもらうから。
“戦争”か……。それも“核”を使えば“ハルマゲドン(最終戦争。アポカリプス)”になる。
“人類”は、なんて“愚かな生命体”なのでしょう……。自分で自分の首を絞めているようなものなのに……。」
アンナはしばらく夕焼け空をかいま見ていた。
どんどん天蓋の中央から、深い藍色の夜と星が瞬き始めている。
アンナは、兄プロメテウスに背を向けたままその場でたたずみ、振り返ろうとする様子も無く。兄に言葉をかけた。
「現在。アトラス兄には“黄金の柱”。私は“碧い柱”……。それぞれ“太平洋海域”と、“中央アジア空域”に、そいつを建てている最中。兄さん。“τ空間の柱”“第6次元の柱”をもう一度実行するわよ!!!!」
その言葉に、プロメテウスは悲しげに答えた。
「2本も建てるのか……。今度は、まだ“ψ(サイ)エネルギー”の開発は“未完”だろう?!! “人件”を使うのか……??! 私のために、随分多くの“ψ(サイ・超能力者)”の命を捨て去る事になるなあ……。」
アンナ「命は当然“ψヤプー”の“命”を献上するまで!!!! 多分……。1000匹程度は使わなきゃならないでしょうね。
彼らはのちに“τ空間”に成る“マンドレイクの実”に姿を変えて、こっちの空間へすこしづつ戻って来れるから“τ空間”へ“永遠”に閉じ込められずに済んでくれるから、それでもまだ幸せなのよ……。気の毒ね……。“ヤプー”とて、“人格”があるだろうに……。
それから、“核廃棄物”をすぐに“解除”する必要があるから、急遽、肥畜用に“ロー・ヤプー”を800万匹ほど、潰さなきゃならないわね!!!! “猿人・ネアンデルタール族・ヤプー”とは言え、可哀想に……。」
プロメテウス「アルゴル星系の“アルゴノス(毒きのこ)”を使うのか?!!」
アンナ「そうよ!!!! 兄さん!!!!」
プロメテウス「そうか、その手しか無いのか……。結局は私や、私の弟の罪まで“ヤプー”たちに、背負い込ませてしまった。人類の失態だ……。」
アンナ「兄さん。私たちは“イース人”よ。“ヤプー”に同情なんて……、ああ、つい私まで一緒になってヤプーに“同情”をしてしまっている……。
“私たち人類”のために“彼らは”働いてくれているのよ、感謝しなきゃ。」
プロメテウス「人間は、わがままな“暴君”だ!!!! 人類だけが頑張っている……。」
アンナ「ヤプーは優しい“猿たち(シミアス・サピエンス)”ね……。せめて“信仰”による“救い”だけでも、与えてあげなければね……。」
アンナは、しばらく黙っていると、再び言った。
「兄さん。あと“刑期”はどれぐらい??!」
プメロテウス「さて、まだ始まったばかりだ。“全14万4千日の責め”が終わるまで、あと、300年以上は十分かかりそうだ……。」
太陽が完全に西の空に沈み、時間はとっぷり暮れてしまった。
空には満天の星空が輝いていた。
アンナが、ふと後ろを振り返ると、そこにはすっかり傷が癒え、身体が元通りの綺麗な状態に再生しているプロメテウスの姿があった。
プロメテウスの回りには、その後の野鳥が襲って来ないようにとの配慮で、透明状の天蓋の壁がおおっている。
しかし、プロメテウスの手足の拘束はまだ、鎖につながれたままで、解かれないままである。
明日の朝早く、また日の出と共に天蓋のおおいが外され、多くの野鳥たちが、プロメテウスの肉体をついばみにやって来るであろう。
目玉がえぐられ、また腹が裂かれ、内蔵を食い破られる。
それでも、プロメテウスは、決してひるんでいるようすはなかった。
プロメテウスは言った。
『私の弟と、その子たちが“タイムトラベラー法”を侵し、その結果。古代の14万4千人の人類を死に追いやり、地球の自然を破壊した。いまもなお“放射能廃棄物”が、大地と大気に散乱している……。そして、そのために名も無い800万1000匹の家畜ヤプーたちを殺してしまうのである。
私の罪等は、まだまだ軽い位である……。』
アンナ「もうエピメテウス兄は、とっくの昔に“古代人”として“5万年”も昔に、自然のままに生きて、800年の生涯を終えて、死んでしまったというのに……。
その“罰”を、兄さんが受ける事になるなんて“お人好し”……。本当に兄さんらしいわ。」
プロメテウスが、アンナに答えてぼそりと言った。
「“妻子”も“子孫”も既に持ってしまった“弟”が、気の毒になったのだ……。“弟が罪”を侵した理由も、私には、もっともな事だと思ったからね……。
“弟の罰”は、過去の時代で過去の妻と暮らし、生涯を終える事で、十分罰を受けたのだからね……。
それに“事件”は“弟が亡くなって”から、“5万年も後”の時代になって起こった事なのだ。弟に罪はない。」
アンナは立ったまま。鎖につながれ、ぐったりとその場に座り込んでいる、兄プロメテウスの側まで歩いて来ると顔を見下ろし、“ふっ”と笑みを浮かべてみせると、激励してやるかのように声をかけた。
「今日は、ご苦労さまでした……。明日がまた来るわ。今日はおやすみなさい……。これが、兄さんの“功徳”と言うものなのかしらね??!」
アンナはそう言うと、疲れきったまま微笑む“兄プロメテウス”の姿を背に、無言のまま、つかつかと近くに止めてある“タイム・ヨット”への方へ歩きながら戻って行った。
昔々。のちの人が残した、神話……。
昔々。“最初の女・パンドラ”が、“後で考える神・エピメテウス”と結婚した。
“神々の王・ゼウス”は、それに対して怒ったが、彼女には何もしなかった。
エピメテウスの兄の“前に考える神・プロメテウス”は、パンドラに2つの壷を与えた。
一つは“災い”の入った壷。もう一つは“幸福”が入った壷。
プロメテウスはパンドラに、「覗いてはならぬ。」と言って、それを渡したと言う。
“知恵の神・ヘルメス”から“興味欲”を授かったパンドラてある。壷の中身か気にならないはずが無い……。
パンドラは、到頭2つの壷ごと覗いてしまった。
ほんの少し、開けて直ぐに蓋をしたので、壷の底に残っている一つづつの“希望”のみが、出ずに“壷の底”に残ってしまった。
“希望”。それは、ブロメテウスが、
「パンドラの事だから、多分壷は開けられる事だろう。」と思ってか、壷の底にそっと残しておいたものである。しかしそれは、“壷の底”に残されてしまった。
“災いの壷”は、パンドラによって開かれ。世界に“災い”をもたらした。
“幸福の壷”は、地上におられずオリンピア(天上界)へ戻ってしまったと言う。
かつて、パンドラが持ち、その後棄てられた、双つの壷は。独りの男が探す事となった。
双つの“壷”の“完全開放”をするためである。
壷の中には、まだ“希望”が隠れているからだ。
探す男は、ユダヤの王と言われた男。またも、世界の“救世主”とも……。
彼は、ユダヤの“予言者・アンナ”に出現を予言され。
3博士の独り、バルタザールから“教え”を受けた。
かくも、彼の述べる“ドグマ(教理)”は。
“愛”“希望”“真心”そして、“夢”……。
それは“4つのケルビム”でもあった。
かくも、“アイソーポスの寓話”は語る。パンドラの壷は、双つあったと……。
希望は双つ……。
“災い”の中。そして“幸福”の中にも。 2001'3'9'
原文・2001年3月。
2014年4月 アップロード。
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