“真・家畜人ヤプー”リリスの帝国編《宇宙の帝国》
ACT3・第25話、第26話


★第25話・ΨΑΛΜΟΙ δ´(プサルモイ テトラ・詩編4)★
★第26話・ΒΑΛΚΑΝ(バルカンの書)★








◎第25話・ΨΑΛΜΟΙ δ´(プサルモイ テトラ・詩編4)◎



「宇宙……。それは、最後の開拓地である。」
「幾多の苦難を乗り越えて……。」
「我々は、新しい文明、未知なる生命体を探索し……。」

“全宇宙”“全銀河”を我が“王国へ”と治めることを目的とする。
 我が“イース帝国”。又の名を“大英宇宙帝国”!!!!

 現在の“占領地”は、まだ“全宇宙”の、まだほんの片隅に過ぎないのだ……。




(「旧・宇宙大作戦」及び「STER TREK・アニメ版」タイトル“語り”一部引用、より。)

原文・2001年3月14日。絵・文の写し・2003年5月製作。









◎第26話・ΒΑΛΚΑΝ(バルカンの書)◎



 エリダヌスα。アケルナ−星系、第3惑星の星住民族。
“バルカン・ホモ・サピエンス”たる、独りの奴隷の“賢者”が、クララに話しかけた。

「我々は“知性”を重んずる種族である。そして、我々の教理は“平常心”である。
 我々の“科学テクノロジー”は、“イース”のそれより遥かに優れたものであるが。我々は強(し)いて、貴方がたとは戦いません……。

 強制するのでありましたら、“奴隷”にされても構いません。ただ、我々種族は最後まで“スラック主義”を徹底的につらぬき通します!!!」







“アケルナ−星系・第3惑星”を、別名“バルカン星”とも言った。
 この“名称”は、この惑星に、元来住んでいる原星民族たちが“自称する星名”である。

“バルカン”とは、地球の“古代ローマ”時代に出て来る“火山の神”と、偶然同じ名称である。
 それに、この星の環境は、その“バルカン”の名に相応しく。年中真夏日で火山と地震が多く、空気が希薄な上に、海面も全球体面の1/3にも満たない砂漠地帯の多い惑星である。

 その大きさと大気成分は、ほぼ地球とほとんど変わりは無いが、生息生物種は極端に少ない惑星である。


 ちなみに“スラック主義”とは、地球の20世紀前半に、インドで起こった“ガンジー主義”によく似た、“戦わずして戦う”という“忍耐的主張”である。

 ちなみに“スラック主義”“スラック”とは。バルカン星の“有史以前”に出現した、いわば、地球人類で言う所の“救世主・イエス・キリスト”のような人物であり、ここバルカン星の人達は皆、“スラック”のことを“導師様”として、深く“崇拝”をしている。

“スラック”は、いわば現在のバルカン人たちの“人格”の主とする、“平常心主義”“無感情主義”の教えを、全世界のバルカン人たちに“教理”として、広めた人物であるのだ……。



 ここバルカン星は、赤色巨星を持つ天体であり、年中あたたかい気候のために“日本米”の生産に適している。それにバルカン星には、雨期と乾期が、1年369日のうち2回あるので、ニ毛作にも適していた。それゆえに、イース人はたちはバルカン人たちを“百姓奴隷”として、とり扱った。

 理由は、“苦痛労働”を強いて“イース”に対しての“従順さ”を教え込ませることと。星の支配権を持つイース貴族たちの、個人の豊かさを競いあうための奴隷としての義務を果たさせるためと。そして、おもにイース人“百億”の民たちの“米食主義者”“養う”ためでもある。



 バルカンの賢者が、クララに話した。
「貴方がたイース人は、たった100億程の、有人惑星を含む恒星系を、制覇した程度で有頂天になっているが。気を付けなされ。それはこの全銀河宇宙のほんの一部に過ぎませぬぞ……。

 この全銀河系の内の、約1/3はクリンゴン帝国の領土。あとの1/3はロミュラン帝国の領土となっており、双方共に“軍事大国”です。
 今、貴方たちの住まう星域の銀河の端から外の世界と、大マゼランにかけては、ボーグと呼ばれる、半機械人間たちの領域となっております。また、銀河の外には巨大な暗黒星雲が控えており、メタノイドと呼ばれる、金属の躯(からだ)を持つ生命体が、銀河をいつも監視しています。

 これは、私たちバルカン人からの警告ですぞ。イースのみなさん。私福を肥やしている事態ではありませぬぞ。」!

 バルカン人は、“無表情”“美徳”とする異星人である。
 クララは、バルカンの賢者の話を聞いているうちに、宇宙の今の現状について、恐くなってきた。



 ポーリーンは、嬉しそうにクララに言った。
「小さい帝国だからこそ、これから大きくしてゆく意義があるのよ。私たちには“6次元”を自由に操る力があるの。私たちに刃向かう族(やから)は、皆、大火傷するわよ!!」

 クララは不思議そうに、ポーリーンにたずねた。
“6次元”ですか……?」

ポーリーン「“6次元”は、宇宙航法に利用されているだけしゃないのよ。惑星や恒星を両断、あるいわ消去することも可能な武器よ。もちろん、星1つを封印も縮小もで出来るわ!!」






 ポーリーンは、今一度、バルカンの賢者に向き直ると言った。
「貴方、確か。イースより、バルカンのテクノロジーの方が遥かに優れていると、豪語したわね?!! 確かに、貴方たちの宇宙船や住まいの生活環境をみている限りは、私たちにも眼を見張るものはあるわ。でも、私たちイースの方が数段合理的よ!!!

 例えば、貴方たちは、宇宙船は“反物質エネルギー”を用いて、光速の3乗の倍掛けで宇宙を航法する方式を採用し、ワープ10(銀河の端から端までを3日の距離で飛ぶ)での航法が可能なようだけど。
 ……半物質をエネルギーにして、人を乗せる航法は危険過ぎるわ!!

 私たちの宇宙船は、まだ光子力とタキオンに頼っているけれど。自由に宇宙空間に穴を開け、航路、“スターゲイト”を造り出す技術があるの。だから、銀河の端から端まで半日とかからないわ!」


 するとバルカンの賢者も、負けずにポーリーンに問い返した。
「私共。バルカン人はスターゲイトを歪める技術は採用しておりません。出来ますが致しません。万が一、船の故障で“船が大破”した時に、我々人類の“肉体は滅び”ますが、“魂(たましい)”までが宇宙空間に取り残される危険は無いからです。

 スターゲイトだと、確実に計測不能の“虚数空間の中”“肉体”のみならず、“魂”までもが閉じ込められてしまいます。お解りでしょうか?!

“第6次元”を応用するためには、多大な“Ψ(サイ。精神波)”エネルギーが必要であることを……。貴方がたイース人は、まだ“Ψエネルギー波”を、機械で造り出す技術は、まだ未開発と思われますが……。」


 すると、ポーリーンはバルカンの賢者を見下すように、にんまりと笑むと、言った。
「当然。“人力”を使うのよ!!!!」

 バルカンの賢者の表情が、瞬時にして青ざめた
「あ。貴方がたは、そういう“種族”だったのですか?!!!」



ポーリーン「そうよ!!!!“人身御供”を使うの!!!! それも、従順に飼いならした“奴隷”“ヤプ−”“サイキッカー(超能力者。念動力者)”を大量に使ってね!!!!

 私は。バルカン人が青ざめる所を始めて見たわよ。世程、貴方たちバルカン人は、お人好しの異星人のようね。“平和ボケ”しているわよ!!!! ひとたび戦争が勃発したら、奴隷もヤプ−の命もあったものじゃないっ!!!! 味噌も糞もないわよ!!!!

 史実によれば、貴方たちバルカン人たちにも少しばかりの“サイキック(念動エネルギー)”があるらしいじゃないの!!? 他方の帝国から全面戦争が起きた時には、しっかり貴方たちの“命!!!!”献上させてもらうわよ!!!!」


 そこまで聞くと、バルカンの賢者は無言のまま、その場にひれ伏した。
 ちなみに、“Ψ(サイ)エネルギー”を、根こそぎ奪われたサイキッカーの末路は。見る間に老いて枯れ、ひからびたようになって死んでしまうのである。





 話は戻るが、バルカン人たちは、イース帝国のために働く“異星人奴隷”である。
 バルカン星は、年中暑い気候にさいなまれるため。当然、バルカン人たちは“百姓奴隷”として、年中過酷な“肉体労働”を、余儀無くさせられるのだった。

 イース帝国は、西暦2015年にバルカン星を植民惑星の1つとし、この星を“米の製造惑星”と定め。その後の約4世紀程経ったのちに、8百万匹ばかりの奇形ヤプ−をバルカン星へ輸送した。
 それはバルカン人たちの、米造りを手伝わせるためである。

 バルカン人は、頑固で卑屈な異星人だが、戦争を好む種族ではない。

 それゆえに、バルカン人はイースの従順なる“百姓奴隷”となった。
 ただ、バルカン人たちは、感情を顔に出さない種族である。いかなる仕事を強制されようとも、彼等は無言のまま、黙々と働いた。

 バルカン人たちは、ほとんどその容姿は、イース人とは変わらなかった。ただ、少し変わった所があるとすれば、とんがった耳と、眉毛の両端がつり上がっている位のものである。“肌の色”は不思議に、“ヤプ−たち”のそれに似ていた。バルカン人たちも、実は黄色種なのである。




 代々、有史以前から。“フードディスペンサ−(合成食品を造り出す機械)”の御利益をたまわり、使い続けてきたバルカン人たちである。
 イース帝国に“百姓奴隷”とされるまでは、食品を天然物から直接的に摂取するなと、あまりなかったものである。

 それ所か、大地を耕して食べ物を得るなどと、途方もない発想であった。

 ちなみに、バルカン人たちの“平均寿命”は、地球人に換算して“約240歳”である。
 バルカン人たちの、長い“寿命”が、“米造り”のみに費やされるのである。

 ちなみに、バルカン人同志の“挨拶”は、お互い同志“手の平”を目の真前にまで持ち上げ、無表情のまま。「長命と繁栄を。」という言葉を言い習わす習慣がある……。
 これは実際。イース帝国の“百姓奴隷”と化した、“彼ら”にとっては、皮肉極まりない挨拶のセリフとなったのであった……。



 バルカン人たちは、我慢強い種族である。

 彼等が黙々と地面を開拓し、水を張り。暑い炎天下の中“米の苗”を植えてゆく。
 もし彼らが、地球人であったのなら“労働歌”の1つでも歌いながら、仕事に励む所であるのだろうが。彼らは“無言”である。その様子は、実に無気味なる風景である。

 バルカン人は、元々(もともと)、知力、腕力、体力共に優れてた人種であるが、朝日が昇り出してから夕方までの、長時間続きの“田植え”作業に、“腰痛”はつきものである。
 イースの“百姓奴隷”となる前の、有史以前からの数千年の間。バルカン人たちは、おもに“オフィスワーク”を労いとしていただけに、慣れない作業は実に気の毒であった。


 ……米の収穫は、年に2回である。しかし、この収穫風景がまたえぐい。

 1つの苗の中から、ひと粒だけ最も優れた粒を寄り出し、それを丁重に脱穀し、ひと粒ひと粒に、このバルカン星の領主たる者の“家紋”をルーペを使って、ひと粒ひと粒、純金の絵の具を液状化にし、手書きで描き上げるのである。

 ちなみにバルカン人たちが、米に描くべく家紋は“双頭の鷲”である。つまり、ジャンセン家の家紋である。バルカン星は、“ジャンセン侯爵家”の領地だったのであった。


 地平線の彼方まで続く、途方もなく広大なる田んぼの風景……。

 その中の、1つの苗から、ひと粒の最も良質の米粒を選り出し、それに家紋を描き込む。
 書き込まれた米は、ひと粒ひと粒集められ。金糸銀糸を織り込んだ“双頭の鷲”“家紋”が入った袋に詰め込まれる。
 勿論その袋も、お手製の、有史以前に使われた、手織り用織り機を使い、一筋一筋織り込んでいったしろものである。

 バルカン人たちは、ヤプ−たちと共に、収穫と田植えの時期以外は、こうやってひがな1日、米粒に絵を描き込む作業に終われる。


 地球では。否、旧ヤプ−世界では。
「米のひと粒は、百姓の汗のひと粒。」と言うが。バルカン人たちは、そうは言わない。

「ひがな1日、非論理的作業に明け暮れる。」と、肉体的苦痛を耐えながら、
「米のひと粒は、非論理のひと粒。」と、首を傾げながら仕事を続けるのだ。






 ちなみに、あとの残りの米は。脱穀され“ノウキョウ”と呼ばれる、“農産物統合惑星”へ、スターゲイトを伝って送られる。

 ちなみに、脱穀前に落ち穂となった米は、バルカン人たちの日々の食料にされるが、バルカン人は、元々米を食べない種族であるので、おもにヤプ−たちの御馳走となる。

 1日の始まりと終わり。そしておやつの時間と。1日3回。“バルカン人”たちは大きな“和製ちゃぶ台”を囲んで、地べたにゴザを敷き。輪になって“奇形のヤプー”たちと一緒に“大きなニッケル製のやかん”に入った緑茶を、瀬戸物で出来た、バルカン製の“湯呑み茶碗”に注ぎ込み。共に“茶”をすすりあう。

 ヤプ−たちは、その後。「良いお手前で。」と言い。バルカン人たちは「お粗末様です。」と、答える。

 ちゃぶ台の上には、梅干しや、タクワンの入った“おむすび”が並び。それをヤプ−たちが食べ。バルカン人たちは、自分たちが垂れた、糞尿を基にクロレラを栽培し、そのクロレラを料理して“プロミックスープ”と称し、ただそれを黙々とすすって頂くのである。


 ……論理的な科学文明の中で、日々暮らしていたバルカン人たちが、それらの生活を全て捨て去り。イースの百姓奴隷となり。
 再び、質素なる有史以前の生活が、ヤプ−たちと共にバルカン星にやって来たのだった。

 これは。バルカン人たちの、イース帝国の奴隷下に至った、ある日の風景であった。





 ポーリーンは、ふとつまらなそうに、クララに言った。
「バルカン人って、眉毛の両端がつり上がっていて、耳がとんがっていて長いのが特徴の上、全く人類とほとんど変わらない遺伝子形態なの。あれでも立派にホモ・サピエンスなのですって……。それゆえ、家畜人には出来ないわ。だから、奴隷向きなのよね。

 でも、バルカン人は肉体労働か、精神労働以外は、全く不向きなのよね。サービス労働は根っから無理なの。本当に取り扱いにくいわ……。全く人間的感情を無視する生活を好む彼らは、性格がストイックなのよ。

 彼らは暑い星の民族でしょう、だから、氷点下の雪山に毛皮と石斧だけ与えておいて、1ヵ月も棄っぽりだして放置して置くと、大抵の場合。先祖帰りを起こして、性的感受性には目覚めるわ。
 ……そうすると、今度は薮蛇でね。性欲過多になって、今度は使いづらくなっちゃうの。……やはり奴隷は、グラウコスが一番なのよ。」



 ちなみに、バルカン人たちが造った、ジャンセン家の家紋“双頭の鷲”の絵が入った“非論理米”は、その後。ジャンセン家の人達が食べる訳だが、元々、肉食と果物とを好むイース貴族である。結局は大量に残る。

 残ったそれらは、化学的に“結晶化”という処理が成され、ジャンセン家の敷地内の道路に敷かれる“舗装道路”の材料となる。

 それらは、“透明アスファルト”に混ぜ込まれ。今、“地球”で住まっている、ポーリーンの邸宅の回りにも敷かれているのだ。
 時折。地面の表面が、太陽光線を浴びてキラキラと輝いて見える。また、まんじりと見つめると、それがまた、水晶かダイヤのように綺麗だ。その、透明の宝石を、ひと粒ひと粒見つめると、御丁寧に小さくジャンセン家の“家紋”。金色の“双頭の鷲”の絵が入っている。





 地球西暦1970年。ヤプー暦1748年。10月15日……。

 この日クララは。始めて、奴隷化されたある星の原星民たちの現状を、
 ポーリーンの新邸宅、“水晶宮”に備えてある、“バーチャル・ホログラム室”の中で、ポーリーンと共に覗き観たのだった……。


原文・2001年3月14日。絵・文の写し・2006年5月製作。





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