ACT2“真・家畜人ヤプー・リリスの帝国編”第24話
西暦3970年。ヤプー暦1748年。10月16日。
“時空飛行島・ラピュータ”にて……。
突然。地球支部、タイムパトロール総監“アンナ・オヒルマン侯爵”が、大声を張り挙げながら、彼女の秘書官の“レイノオ”を呼び出した。
レイノオは、“ローヤプー”に良く似たタイプの人種。モンゴロイド(黄色種)の“支那人”であったが、立派にイース人貴族のアンナ付きの秘書官だった。
レイノオが、アンナの突然の呼び出しに即応じて、ここ“王母宮”の“アンナの私室”に慌ててすっ飛んで来ると。アンナは独り、頭を抱え込みながら悩んでいた。
アンナがレイノオに、ぼそりと言った。
「ヤップミルク(畜乳)が、底を尽きかけている……。こ、困った。我が時空飛行島・ラピュータでで飼育している、現在約800万匹にも及ぶ、ヤプー達が皆餓えてしまうう〜。」
ちなみに、“ヤップミルク”とは、“し尿(糞尿)”の事である。それもこの、ラピュータに住まうイース人と奴隷、牛などの家畜達がたれた“し尿”を、どろどろに溶かし込んだ、こてこての“汚物”の事である。
真時に言って、“ヤプー”は“し尿”をしない“生き物”であるが、その代わり“し尿”を、お尻から“吸収”し、100パーセント、カスも出さずに“栄養”にしてしまう、不思議な生理を持った“生き物”達なのであった。
レイノオは、おろおろしながら、アンナに返した。
「それでは。“スターゲイト”を使いまして、“急遽カルー本星”から“ヤップミルク”を分けてもらいましたら、如何でしょう?!」
アンナ「レイノオ……。それは私が、ついさっき亜空間無線システムを使って、カルー本星に、その下りを話して頼んだのじゃ。そしたら“スターゲイト”に“そんな汚物”は送れない。と言われて、しっかり断られてしまった!!!
また追信で、正直今は、何処の星系でも“自給自足”の生活をしているので“ヤップミルク”は足りない位なのだそうだ。
こればかりは、“自分達でどうにかするように!!!”と、本星から、さとされたばかりだ!!!」
レイノオ「それでは、地球各地の民事団体に頼んでみましょう……。」
アンナ「それも今頼んでみたが“余裕が無い!!!”と、あっさり断られた。大抵、現在の地球には、全ての奴隷とイース人を合わせても、15万人の存在すらないのだ!!! それに対して、ヤプー共は現在、この地球上に“2億匹”もおるのだぞ!!!!」
レイノオ「どうしましょう……?!」
アンナ「だから、お前に聞いておるのだ!! こんな事なら、一昨日ポーリーン達がうちへ来た時に、うんと御馳走をしておいて、うんこをたっぷりとっておけば良かった……。」
レイノオ「御主人様。今頃悩んでも、遅うございます……。それにたったの3人分のうんこなど、この場に及んでは少なすぎますよ、何匹のヤプーも養えませぬ。」
間もなくして、レイノオは、アンナに静かに言った。
「御主人様……。かつて“2000年前”の地球には、“60億”もの“人間”が住んでいたそうでございますな……。これだけ“人間”がおりますれば、相当の“ヤップミルク”が手に入りますな……。」
アンナ「それはその通りじゃが……。それがどないしたんや……?!」
レイノオ「こうなったらご主人様っ!!!! いいですかっ!!!! 今から、こそおっと“20世紀”へ行って、“バキュームカー”を1台、盗んでまいりましょうよ……。」
しばらくの時が経った……。すると、突然アンナの顔が真っ青に変わり。
レイノオの頬が大きな音を立てて、彼の体ごと部屋の端にはじき飛ばされた。
「“ばちこーん!!!!!”」
底座にレイノオの左頬に、アンナのびんたが飛んだのだ!!!!!
アンナ「馬鹿者っ!!!! この“イース帝国、地球支部・タイムパトロール総監!!”この“アンナ・オヒルマン侯爵”たるものが!!“古代人のし尿”を盗むなど!!! そんな恥ずかしい事など、出来るものでわないっ!!!!」
アンナ侯爵にぶっ叩かれて、痛い頬を撫でながらレイノオは言った。
「ご、御主人様っ!!! ご主人様っ!!! お許しを!!!!」
アンナは、しばらくして、レイノオに言った。
「しかし、レイノオ……。お前の言う事も“一理”ある!! 20世紀時代の“し尿”を満タンにした“バキュームカー1台分”の“ヤップミルク”があれば、うちの“家畜”共を“1年間”は十分生存させられる。良い、考えじゃ!!」
レイノオ「ははっ!! 有り難きに幸せにございますっ!!!」
アンナ、静かに言う。
「しかし、私は臭いのも、汚いのも嫌いだぞよ……。」
レイノオ「スベロー星から取り揃えました5台の、プギーは“超特級品”でございました!!! ヤップミルクが無ければ、うちにあるコガネムシもプクーターも、ローヤプー型、刺青入りセッチンや、プケートや畜輪車。読心家具の数々の全てや、時間をかけて教育したベンゼル達も皆死んでしまいますっ!!!」
アンナは、独りぼそりと言った。
「も、勿体無い……。どのヤプーにも思い入れがあるのじゃ!!! おお。私はどうすれば良いのだ!!!」
間もなくして、アンナは静かに言った。
「なあ、ラピュータが東京上空に現れたら、やばいなあ……。1台の“バキュームカー”を狙い絞って、なるだけ近付いて“テレポート”させて盗むのじゃ……。」
レイノオ「20世紀の東京に、“歴史上”に残る“史実”は、絶対造ってはなりません。」
アンナ「このラピュータを“透明”に出来れば良いのだが……。」
レイノオ「それは、好戦的な“ロミュラン星人”の“宇宙艇”でも無い限り、イースの現状の“科学兵器”では無理です!!!」
アンナ「判っとるわいっ!!!! それでは“曇りの日”に、雲の上に隠れて、こそおっと行えば良かろう……。」
レイノオ「20世紀には“旅客機”が飛ぶ時代であります。直ぐに見つかりますぞ!!」
アンナ「では、20世紀は止めて、やはり11世紀以前に行くより仕方が無かろう。」
レイノオ「その通りでございます。11世紀以前なら、少々の事でも、歴史を歪めない限り、大抵は神話、伝承にされてしまいますので好都合でございます。」
アンナ「レイノオ。するとやはり、ターゲットは“日本”かのう?」
レイノオ「西洋だと、既に大砲や鉄の兵器がございますので、これがきっかけで、どんな戦争に発展しても困るますゆえ……。日本ならまだ“神、妖怪”の仕業で終わりますし、“島国”ですので、それはそれは好都合でございます。」
アンナ「どこへ行けば、大量の“人糞”が手にはいるのじゃ?! この時代には、まだ“バキュームカー”は無いぞよ。」
レイノオ「確か、田畑へ行けば、点々と“こえつぼ”が並んでいるはずでございます。」
アンナ「バキュームカー1台分の“人糞”を盗むためには、“こえつぼ”は、いくつ位、襲えば良いのじゃ?!」
レイノオ「さあて……、500穴位は……。」
アンナ「確か、この時代の人糞は、ひしゃくですくって、樽で運ぶんじゃのう……。」
すると突然。アンナ
「レイノオっ!!! お前が運べっ!!!! 私は嫌じゃっ!!!!」
レイノオ「500穴全部盗むと、百姓達が困りますので、50穴位で……。」
アンナ「50穴で、どれ位のヤプーが養えるのじゃ?!」
レイノオ「何せ800万匹おりますゆえ、20日分、位ですかなあ……。」
アンナ、突然怒り出す。「“話にならんでわないか!!!!”」
再びアンナ。
「日本で、紀元11世紀頃、一番人口の多い“都市”はどこじゃ?!」
レイノオ「多分“平安京”でわないかと……。」
アンナ「それでは、曇りの深い夜などに、“平安京”の丁度真上に“ラピュータ”を停泊させておいて、適当に“ヤプー共”を下界へ“テレポート”させれば良かろう。ヤプー共に、勝手に“人糞”を“盗ませれば”良かろう……。」
レイノオ「それは、良い考えでございます。しかし、平安京は公家の城下町でございます。ヤプー共が、いつ何時、武家に殺されるやもしれませぬ……。」
アンナ「では、下界へ下ろす時は“100匹ひと団体”で下ろせ!!! ひと団体ごとに、必ず“セッチンは総動員”させよ!!! それから、武家などに襲われた時の用心に、携帯用“亜空間バリヤー”と、各自に“ナルコピストル(睡眠銃)”を持たせなさい。」
レイノオ「民家。一件づつの離れにある、かわやの掘り込み便所を襲うのですな……。」
アンナ「そうじゃ!!!」
その後。しばらくは“レイノオの作戦”で、ヤプー達の食料を確保する事となった。
現在の時代においては、“京都、一条戻り橋”当たりに“百鬼夜行”と称して、“魔界”からの“鬼妖怪”が現われる。という言い伝えが未だに残っているが、実は、この“鬼妖怪の団体”こそは、“平安京”における“人糞”を求めての、アンナ所有の“ヤプー”達の“移動行動”なのであった……。
その後。ヤプー達が度々、百鬼夜行をくり返すため、ついには“平安京”の百姓達が、“肥料不足”に困る事となった……。
そこで、タイムパトロール総督・アンナは、もう少しばかり“ラピュータ”に乗る“イース人”と“奴隷”の“人員を増やし”、それでも足りない部分は、“ヤプー共”にも“流動状オートミール”や“天然果汁”を、尻から食べる(エンジン虫が食べるのでーす)権利を与えた。
ちなみに。“時々の時代”において、必ずと言って良い程、“内政干渉”をしてしまう“タイムパトロール督・アンナ”であった。
原文・2001年2月26日。絵・文の写し・2005年11月 製作。